今回のウィズ・タイムでも、違う世代がイベントを通じて交流することで見えてくるものがある。志村さんは「三世代の場合は物差しが100年分になる」と表現する。その結果、「本質的なものの見方に到達できるようになる」とも言う。
ドイツでは、小学校教育の中にこのダイアログシリーズのプログラムが取り入れられているそうだ。ウィズ・タイムでは、終了後、子どもたちが会場内で祖父母に電話する姿が多く見られるという。いつもあまり話をすることがない祖父母に思いを寄せるからだろう。
「高齢」を新しい「価値」に
このイベントの興味深い点は、これまでネガティブにとらえられていた「高齢」を新しい「価値」に転換していることにある。
同法人はアテンドに報酬を支払っている。報酬を得ることは、年金をもらうこととは気持ちがまったく異なるそうだ。「私の義母もアテンドをした経験がありますが、給料が出た際は、私たち夫婦を青森の桜を見に連れていってくれました」と、志村さんは振り返る。
さらに、「障害」を新しい価値に変えて商品を作り出す企業とも提携している。
例えば、イン・ザ・ダークの視覚障害者のスタッフは、指先などの感覚がとても優れている。そこで、この指先で触るスキルを今治タオル工業組合(愛媛県)の「今治タオル」の上質な触り心地の向上に役立てたり、漆とロック株式会社(福島県)の漆器「めぐる」のお椀や匙(さじ)作りに生かしたりしている。
志村さんはダイアログシリーズのイベント開催を通して、どんな社会を目指しているのか。
「これまでの社会では、同じ形と色のレンガが積み重ねられ、定形外のレンガは外されてきました。でも、本当は城壁のように形や色が違うものが重なっているほうが、崩れにくく強靭さがあります。それが、それぞれの多様性を受け入れた、ゆるやかなつながりのある社会ということですね」
このイベントの発想の転換、および志村さんの社会に対するビジョンに筆者は強く共感する。
*アテンドスクール募集はホームページで公募している。
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