他人にお金を使う人の幸福度が上がるカラクリ 他人と繫がる重要性が刻み込まれた人間の脳

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「情けは人のためならず」ということわざがあります。これは、「人にかけた情けは巡り巡って自分に返ってくる」という意味ですが、私たちのご先祖様は、「人のためになること(向社会的行動)をすると、自分のためになる」とどこかで気づき、大切なこととして語り継いできたわけです。
これらを踏まえると、アクニンらの研究の内容が腑に落ちるのではないでしょうか。

他人のためにお金を使うのは、目的がはっきりしているうえに、手段も向社会的行動の中でも、特にシンプルで分かりやすいものです。つまり、「他人のためにお金を使った」その瞬間に、自分の目的は達成できたと脳が理解できる明確な行動をしているので、幸福度もしっかり上がるんですね。

週に1回でもいいから、「他人のために何かをする日」をつくる

他人にお金を払う以外に、他人のためによいことをする方法論もあったりします。カリフォルニア大学のソーニャ・リュボミルスキーら[4]は、「知らない人のコインパーキングの料金を払う」「献血をする」「友人の問題を解決する」「昔お世話になった先生にお礼状を書く」など、6週間にわたって週に5回の向社会的行動――すなわち〝一日一善〞ならぬ〝一週五善〞をした被験者と、特に何もしなかった被験者を比べる研究をしています。まず、幸福度を比べた結果、〝一週五善〞をした被験者のほうが高くなっています。

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これはみなさんにとっても想定内だと思うのですが、興味深いのは〝一週五善〞のこなし方です。

方法はグループの中でもさまざまでしたが、最も幸福感が高くなったのは、「1日にまとめて向社会的行動を5回した人」でした。

つまり、ハッピーアクションとして〝一週五善〞をするなら、〝週に一度、一日五善〞がベストになるわけです。

新しい経験や変化を求める脳には、日常的にするより、たまにこのようなアクションをまとめてするほうが刺激的であるためと考えられます。

とはいえ、一日一善だって、小さな幸せは得られるわけですから、やってもいいのです。むしろ、そういう小さな幸せを毎日見つけられる人生のほうが、人によってはいいのかもしれません。

みんなが一日一善を実践すれば、思いやりのある、やさしい、そして幸せな社会になるでしょう。まずは、私たちからはじめてみませんか?

<参考文献>
[1] Aknin, L. B., Barrington-Leigh, C. P., Dunn, E. W., Helliwell, J. F., Burns, J., Biswas-Diener, R., Kemeza, I., Nyende, P., Ashton-James, C. E., & Norton, M. I.(2013). Prosocial spending and well-being: cross-cultural evidence for a psychological universal. Journal of personality and social psychology, 104(4), 635-652.
[2] レオン・フェスティンガー(末永俊郎 監訳)(1965).『認知的不協和の理論:社会心理学序説』誠信書房.
[3] Rudd, M., Aaker, J. & Norton, M. I. (2014). Getting the Most out of Giving: Concretely framing a Prosocial Goal Maximizes Happiness, Journal of Experimental Social Psychology, 54, 11-24.
[4] Lyubomirsky, S., Sheldon, K. M., & Schkade, D. (2005). Pursuing happiness: The architecture of sustainable change. Review of General Psychology, 9(2), 111–131.
堀田 秀吾 明治大学教授

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ほった しゅうご / Syugo Hotta

言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組にも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。

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