1年で1割退学「崩壊する都内底辺校」の教育現場 タバコ・喧嘩・妊娠で退学が日常茶飯事だった

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一方で、勉強に集中できるような環境ではなかったようです。長瀬さんに当時のことを深くお聞きしたところ、強く印象に残っていて未だに覚えているエピソードがあるそうです。それは、国語のテストの「未曾有事件」だそうです。

「授業中はみんな寝ているか、スマホをいじるか、先生の授業を妨害するか、というほぼ3パターンでした。そのような状況なので、生徒も勉強を真剣にはしていません。

例えば、国語の授業で『未曾有』という漢字を習い、テストでその読みを問われたのですが、あまりにも正答率が低くて先生も呆れていました。読み方を『みぞうう』と書いた生徒もいましたが、『もうそれが正解でいいよ……』と先生が言って、マルをつけてしまったんです。あの時のことは、未だに鮮明に覚えています」

勉強しているとペットボトルを蹴りつけられる

このように、授業に集中するのが難しい環境の中で、長瀬さんは1人で孤独に勉強をしていたそうです。それが周囲からすると、異様に映ったようでした。

「休み時間に参考書を開いて、勉強しているのは自分だけでした。校内は治安が悪く、他の生徒が、床に落ちていたペットボトルを、私に対して蹴りつけてきたこともあったので、怖い人たちとは関わりを持たないでおこうと、彼らを避けていました。

また集団の中で私の行動が異質だったので、まったく関わりがない人たちに、勉強をすることに対して陰口を叩かれたりしました。『勉強する自分がおかしいんじゃないか』と錯覚しそうになりましたが、中学の環境を経験していたので、勉強を続けることができました」

頑張って受験勉強に取り組んでいた長瀬さんでしたが、在学当時の学校自体も、決して勉強に協力的な環境ではなかったそうです。

「うちの学校は、生徒を怒ったり、勉強について厳しく指導するという空気ではありませんでした。生徒たちが『俺ら勉強なんかできない感じだし』といって諦めていたので、先生方の間でも、『生徒を救おう』といった空気ではありませんでした。

勉強や受験指導に関してはもう、諦めの雰囲気が漂っていたんです。1人ひとりの勉強に真摯に対応してくれるというよりは、できない生徒を1人でもなくすという方針だったようで、私の受験勉強の質問などになかなか対応してくださる時間がありませんでした」

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