ベトナムで「日本の会社」支える女性社長の生き様 丸亀製麺、吉野家、マツキヨなど提携先増やす
最初は1年間で2〜3コンテナ分を売り切るのがやっと。40人のアルバイトを雇って、子どものいる裕福な家庭にサンプルを送り、感想を聞き、PRを繰り返す。
粉ミルク販売でも、同様の手法でファンを増やし、高品質のベビー関連商品の販売を5年で軌道にのせた。メイさんによると、現在は当初の「50倍以上のボリューム」を日本から輸入し、卸販売の中核商品として安定的な利益を出せるようになったという。
旺盛な飲食市場の開拓を目指して、2014年には丸亀製麺とベトナム展開のフランチャイズパートナーを締結、イオンベトナムに1号店を開業した。ベトナムのほかの都市にも広がり、今年で20店舗になる予定だ。
丸亀製麺のFC事業は8年赤字が続き、黒字化したのはつい、2年前のことだという。
「いい材料を使い原価も高い。でも、お客さんは安心安全なもの、健康のことを考えるようになる。収入も高くなり、屋台も値上げしてくるから、それまで待とうと思いました。複数の事業を育てるのは、新規事業の赤字に耐えるためでもあります」と語る。
丸亀製麺を皮切りに、CoCo壱番屋、吉野家、マツモトキヨシなどFCや提携先を増やしてきた。目指すのは、成功しているビジネスモデルを学び、高付加価値な食や製品の輸入を通して日本のライフスタイルを紹介することだ。
【2024年6月1日14時20分追記】初出時の記述に誤りがあり、修正しました。
ただ、「そのまま持ってくるだけでは価値を届けることはできない」とメイさんは強調する。ベトナムの人が好むテイスト、収入に見合った価格、世帯構成などを考慮して「リ・ブランディング」するのが、ロータス社の役割だ。
当面の赤字を覚悟しつつも、「お金に見合う価値」を実感できるマーケットを自ら育てていく。独自企画で売れ筋をつくり出す事例が増えており、マーケッターとしての存在価値に、メイさんはますます自信を深めている。
教育方針も日本から学んだ
そんなメイさんに、レストランで取材していたときのこと。奥の席にいる客と店員のやりとりに耳をそばだてていたメイさんが、すかさずマネージャーのスタッフに声をかけ、サポートに入るよう促す場面があった。
筆者がその様子をみて、スタッフの教育方針について話題を向けてみると、「今みたいな指示も全部、日本から学んだことですよ。30年の間ずっと、日本の人が心からの愛情で社員にも商品にも向き合っている姿をみて、素晴らしいと思ってきたんです」と言い、こう続けた。
「いつも私が社員に伝えているのは、会社は私のものではないということです。いいチームをつくって、いい関係性を築いて、一生懸命目標に向かってがんばりましょうと。でも、今の時代はあまり苦労を知らないから、人の気持ちがわからなくならないか、それをとても心配しています」
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