超一流はたった1%のチャンスでも挑戦する トップ選手の「移籍」に学ぶキャリア形成

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「私が君に教えることなんて何もないと思うよ。君の方がよっぽど知識や技術があるから」

彼は肩透かしを食らったような顔をしていました。なぜこんな突き放したような言い方をしたのでしょうか。彼は、「知識」「技術」にしか目がいっていない感じがしたのです。医療には、知識よりも重要なことがあります。それが、「人間力」です。

もし彼が、「技術を教えてください!」ではなく、「自分はトレーナーを目指しています。何かお手伝いできることがあれば、ぜひやらせてください。なんでもやります!」といってきたら「この青年ちょっと違うな」と感じたでしょう。活躍の場を海外に求めるのであれば、なおさら技術ではなく、「勤勉」「情熱」をもっていること、つまり、人間力を成長させなければならないでしょう。

3.語学力は「おまけ」

グローバル化が進んで、企業が世界を相手に商売をすることが当たり前になってきました。世界で使われている英語は、ビジネスやコミュニケーションのための道具です。

筆者のように海外で16年も仕事をしていると当然語学が堪能だろうと思われますが、まったくそうではありません。現役を引退したミランのOBが、まったく変わっていない筆者の語学力にびっくりするほどです。なにしろベースであるアルファベットがまともに発音できていないのですから……。

しかし筆者は、語学よりも「東洋医学の勉強」に力を入れました。幸いにも筆者の仕事は、イタリア語を使いこなすことではなく、選手を治すこと。言葉はできなくても、選手を治せるかどうかが、筆者の存在価値と考えました。

自分にしかできない「武器」を持て

コミュニケーションのための語学はできるに越したことはありませんが、究極には語学は「おまけ」で「武器」にはなりません。仕事では、自分にしかできない「武器」を持つことがすべてです。言葉が通じない、コミュニケーションがとれないことに劣等感を感じる必要はないのです。

今の時代、必死になって語学を身につけようとする人がたくさんいます。しかし、努力が実を結ぶためには、武器が必要です。武器を持って海外に飛び込んでみて、初めて語学が必要となってくるのですから。順番を間違えないことです。

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遠藤 友則 ACミラン メディカル・トレーナー

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えんどう とものり / Endo Tomonori

ACミラン メディカル・トレーナー。日本体育協会公認アスレティックトレーナー。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師。

1961年静岡県生まれ。20歳のときに膝を怪我したことを機にトレーナーの道に進む。1991年より清水エスパルスのチーフトレーナーとして勤務。1999年に元イタリア代表のマッサーロに招かれて、イタリアに渡るとACミランのトレーナーとして勤務する。
日本人がイタリアサッカー界で働くこと自体異例といわれる中、16年間、監督・メディカルスタッフが代わってもクラブと契約更新ができるほど、選手からの絶大な信頼がある。

公式ブログ
http://tomendo0001.blogspot.jp/

鍋島整形外科
http://www.health-sports.or.jp/

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