原動力は「選手強化」大規模アイスショーの舞台裏 フィギュアブームが追い風、「羽生結弦」の存在感

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2023年幕張公演でアンサンブルスケーターがムービングステージ 、通称「ルンバ」に座る様子。新鮮だったが、非稼働時は菱形の「ルンバ」の一角がステージからリンクに突き出す形で設置されたため、スケーターの軌道が制限されているのではないかとの声が上がった。2024年の「ルンバ」は非稼働時はステージに埋め込まれる形となり、鑑賞体験の質向上に一役買った(撮影:梅谷秀司)

真壁社長の話を聞いたのは2023年公演後、少し経ってからのことだった。2024年公演はどうだったのか。5月24日の幕張公演初日を取材した。

印象的な点を2つ挙げると、まず、前述したムービングステージ、「ルンバ」の運用が洗練されていた。青木祐奈さんと城田優さん&安田レイさんのコラボ演目である「A Whole New World」(ディズニー映画『アラジン』主題歌)では空飛ぶ魔法の絨毯のように使われ、観客をどよめかせた。

2023年の公演では初導入したムービングステージの特長を生かしきれなかった。観客からは、「ルンバ」によってむしろ鑑賞体験が損なわれているとの声が多く上がった。そうした初年度の不満を解消し、「『ルンバ』だからこそ」生きる演出を2年目にして実現した形だ。

ディープな「ガンダム祭り」

2つ目は、アニメ「ガンダム」シリーズを前面に押し出すプログラムづくりだ。参加アーティストであるT.M.Revolution/西川貴教さんはコラボプログラム向けに4曲のパフォーマンスを行ったが、フィナーレ「HIGH PRESSURE」を除いた3曲がガンダム関連の楽曲だった。例えば、羽生結弦さんとのコラボプログラム「ミーティア」は「ガンダムSEED」シリーズの劇中歌だ。

ガンダムファンの琴線に触れる選曲である一方、初日時点では会場内に「何の曲だろう?」と戸惑う観客もいたように感じられた。「WHITE BREATH」や「HOT LIMIT」のような大ヒット曲を多数持つ西川さんであるだけに、それを期待して来た観客を落胆させるリスクをはらむ、かなり思い切った選曲といえる。

数々のガンダム曲を歌ってきた西川貴教さんと、ガンダムファンスケーターである羽生結弦さん、田中刑事さんらが集結したことで実現したディープな「ガンダム祭り」である。

SNSでは関連ワードが複数トレンド入りし、これを機に「ガンダムSEED」を見てみたいという声も少なくない。アイスショーでガンダム曲が演じられたことを知ったガンダムファンからの反応もある。

全演目終了後、ステージ側に出演者がずらりと並ぶ。写真は2023年公演で、リンク中央付近から出演者に向けた拍手を促す羽生結弦さん。これは「ファンタジー・オン・アイス」の恒例行事であり、2024年も同様だった(撮影:梅谷秀司)

また、「ファンタジー・オン・アイス2024」幕張公演では、羽生結弦さんの立ち位置にも変化が見られた。全演目終了後、カーテンコールのような場面で出演者のまとめ役となるのは例年通りだが、演技(とくにオープニング、フィナーレ)においても2023年公演より多くの見せ場が作られた。また、出番自体が増え、前半では「ダニーボーイ」、後半大トリでは「ミーティア」と2つのプログラムを演じた(2023年のソロ演目は大トリの「if…」のみだった)。

ショーにおけるさまざまな工夫と挑戦は続くのだろう。今後、CICが目指す「アイスショーが日本のフィギュアスケーターの強化につながる」という好循環は維持できるのか。その中で、誰がどのような役割を担っていくのか――。華やかなショーの舞台裏に、現在進行形のもう1つの“戦い”がある。

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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