沖縄の有力ホテル・リゾート経営「かりゆしグループ」オーナーの平良朝敬氏と基地問題の取材で会ったとき、「最近は中国人の観光客もすごいでしょう?」と何となく水を向けると、「確かに増えていますが、やっぱりすごいのは台湾の観光客ですね。いま沖縄を潤わしているのは彼らですよ。中国の観光客は増えていますが、まだまだこれからです」という答えが返ってきてハッとさせられた。
統計を調べてみると、確かに沖縄での外国人観光客は全体として日本本土と同様、好調さを維持している。沖縄県文化観光スポーツ部が最近発表した2014年の沖縄への観光客数は、外国人が62・2%の大幅増で89万3500人に達しており、過去最高の観光客700万人突破という沖縄観光の盛況ぶりを大きく下支えするものだった。
中国本土からの観光客はまだ少数派
しかし、その内訳は私のイメージといささか異なるものだった。詳しく見ると、台湾からの観光客が前年比46・1%増の34万4100人と多数を占めており、続いて、韓国が前年比93・9%増の15万5100人、香港が45・9%増の12万3千人、中国本土が約11万3400人だった。中国は前年比で2倍以上になったが、それでもまだまだ数字はほかの国や地域に及ばない。
実際、那覇市でもっとも多くの観光客が集まる国際通りを歩いてみると、確かに中国語を耳にすることは多いが、よく聞いてみると「台湾国語」と言われる台湾なまりの中国語や台湾語、香港人が使う広東語が目立った。しかし、普通の沖縄の人たちからすれば「中国人」ということでひとくくりにされてしまう。これは本土でも同じことが言えるだろう。
台北駐日経済文化代表処那覇分処の蘇啓誠処長によれば、日本のオープンスカイ政策のおかげで、従来1日1往復だった沖縄便が、一昨年から1日6往復まで増え、台湾観光客にとってはわずか50分の距離ということもあって、非常に訪れやすい観光地になっているという。
日本全体の観光客数でも2014年の統計では、台湾からが280万人、韓国からが270万人、中国からが240万人となっており、まだ台湾、韓国のほうが中国を上回っている。一方、1人当たりが落とすおカネの金額は、今年の1~3月の水準を見ると、中国が17万円なのに対し、台湾・香港は10万円程度と大きく違っており、中国人の購買力は確かに強い。
ただ、ここで考えてみるべきなのは、中国の観光客はほとんどが初めての訪日であるのに対して、台湾、香港の観光客は年間1、2度日本を訪れてくれるリピーターが多いという点だ。
いかなるレストランやレジャー施設も、リピーターの獲得なくして長期的な成功は難しい。その意味では、われわれはリピーター観光客である台湾などの観光客を大切にすることも忘れてはならないのではないだろうか。
さらに台湾、香港の観光客の恩恵を受けているのは、東京や京都、大阪などとの都市圏ではなく、東北、北陸、山陰、四国など各地方都市だという点にも注目したい。
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