「大規模アイスショー」が人気を獲得した独自性 「ファンタジー・オン・アイス」は他と何が違うか

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初日の緊張感、それがこなれていく過程、最終日の盛り上がりまで、同じ曲でも異なる演技になる。ファンからは全公演の映像を見たいという声も上がり、ほぼ同じプログラムの公演が、公演日ごとにCSなどで放送される場合もある(有料放送を中心に再放送も盛んに行われている)。

空中と氷上を行き来する「フライング」演目も

コラボ演目だけではない。あらかじめ用意された音源を用いるプログラムも多数あり、現役選手からベテランまで、個性を生かしたプログラムを演じる(写真ページ参照 )。

さらに近年は、メリー・アゼベドさん&アルフォンソ・キャンパさんによるフライング・オン・アイス(ロープを使って宙に浮かび上がり、空中と氷上を行き来しながらアクロバティックな演技を披露する)にも感嘆の声が上がる。

スケーターが空中を舞うスリリングかつ華麗な演技(撮影:梅谷秀司)

昨年の「ファンタジー・オン・アイス2023」幕張公演では計30演目が披露され、開演から終演までにおよそ3時間半を要した(公演の途中、製氷を兼ねた25分程度の休憩時間を含む)。

これはアイスショーとしてはかなり長い公演時間だ。盛りだくさんの内容で、出演するスケーターやアーティストが多い分、制作費用もかさむ。 一方、チケット代金はプレミア席2万7000円、アリーナ席2万5000円、SS席2万2000円、A席1万円など、アイスショーの相場から外れていない。これを実現するカギとなるのが、「一社制作体制」だ。

国内のアイスショーは、メディア企業やアスリートのマネジメント会社などが複数主催の一員となり、企画・制作・運営・演出進行については、専門の業者に外注することが多いという。他方、「ファンタジー・オン・アイス」は、イベント企画・制作を主たる事業とするCICが一気通貫にショーを制作している。

後編では、CIC流のアイスショー制作、フィギュアスケートにかける思い、そして近年のアイスショーの世界の変化を深掘りする(後編は近日公開)。

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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