「大規模アイスショー」が人気を獲得した独自性 「ファンタジー・オン・アイス」は他と何が違うか

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通常、フィギュアスケート向けの音源はプログラムに合わせて用意されたもので、当然、何度でもまったく同じ音楽が流れる。しかし生演奏では、テンポや次のフレーズに入るタイミングなどが演奏するごとに微妙に異なる。スケーターにはそれに対応する動きが要求され、アーティストにもスケーターと息を合わせたパフォーマンスが求められる。

高級BGM付きフィギュアスケートでなく「ダブル主演」

主催企業であるCICの真壁喜久夫社長は、「ファンタジー・オン・アイスの観客は多くがフィギュアスケートファンですが、出演アーティストは単にBGMの役割を担う存在というわけではありません。アーティストとスケーターはどちらも主役なんです」という。

真壁喜久夫(まかべ・きくお)●日本大学芸術学部卒業後、イベントのアルバイトに従事。1999年に株式会社シーアイシー創業。2001年からアイスショーを各地で開催するほか、多数のスポーツイベントを手がける(写真:CIC提供)

スケーターとアーティスト双方が主役の自覚を持ち、パフォーマンスを高め、リスペクトしあって力を出し切る。そこから、異分野共演ならではの感動が生まれる。

アーティストへのオファーは、「まずは誰もが知るヒット曲を持つ方、そして優れた歌唱力をお持ちの方にも出演していただきたい。近年は、今後ますますの活躍が期待される若手アーティストにも出演してもらっています」(真壁社長)。

コラボ曲は多くの観客の記憶に残る過去のヒット曲から新進気鋭の若手の曲まで幅広い。

会場や映画館でのライブビューイングには、出演アーティストのファンで「フィギュアスケートを見るのは初めて」という人も少なからず訪れる。ショーの後にはSNSで、アーティストのファンがフィギュアスケートの魅力を、フィギュアスケートファンがアーティストの魅力を語るなど、エール交換のような交流が行われることもある。

進化するコラボレーション

スケーターとアーティストが一緒に練習する時間を必ずしも豊富に取れるわけではないが、時間的な制約の中での進化も魅力の1つだ。公演を重ねるにつれスケーターとアーティスト双方のパフォーマンスが磨かれ、音楽とスケートがより調和していく。

コラボプログラムでステージに腰掛ける友野一希さん(撮影:梅谷秀司)

「誰に言われるでもなく、互いにコミュニケーションを取って振り付けを合わせてきたりもするんです。一度本番を迎え、会場の熱気やスケーターの本気の演技との化学反応を体感することでアーティストのテンションも上がっていく。初日の演技後にはお辞儀をしあっていた2人が、次には握手をし、それがもっと力強くなり、最終日には抱き合ってお互いを称えたりもします。表現者同士のエネルギーがぶつかり合って特別な空間になります」(真壁社長)

次ページ計30演目、開演から終演までにおよそ3時間半
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