マイクロソフトがAI搭載「Copilot+ PC」投入の意 ライバルは「MacBook Air」、新たに始まるPC競争

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アップルは2020年、Macで使うプロセッサーをインテルから自社開発の「Appleシリコン」に切り替えた。Appleシリコンはスマートフォンと同じARM系であり、x86系とは互換性がない。しかし、独自の設計で消費電力の低さとピーク性能の高さを両立することで、Appleシリコン採用以降のMacは評価を高めてきた。

面白いことに、マイクロソフトは発表の中でことあるごとにアップルの「MacBook Air」を引き合いに出していた。

マイクロソフトでSurface担当コーポレートバイスプレジデントを務めるブレット・オストラム氏は、Copilot+ PCと同時に発表した新しいSurfaceシリーズの開発方針を次のように説明する。

「Copilot+ PCを展開するうえで、パフォーマンス面でアップルを打ち負かすこと、価格面でアップルを打ち負かすことを目指した」

6月18日に発売される「Surface Pro」。Snapdragon Xを採用、初のCopilot+ PC準拠PCとなる(筆者撮影)

もちろん、x86系プロセッサーを作っているインテルやAMDも、プロセッサーの機能改善には取り組んでいる。だがマイクロソフトは、「対アップル」を考え、クアルコムとともに新しい改善を待ちきれなかったようだ。

マイクロソフトがクアルコムと組んで「MacBook Airより優位に立つPC」を開発する最中に生成AIブームが始まり、「オンデバイスAIを活用するPC」を開発する必然性も生まれ、結果としてだが、今回Copilot+ PCに使われたSnapdragon Xシリーズが生まれた……という流れである。

マイクロソフトのほか6社から同時発売される

Copilot+ PCはマイクロソフトのほか、Acer・ASUS・Dell・HP・Lenovo・Samsungの6社から、6月18日に発売される。ARM版Windows 11は以前からあったが、これだけ多くのメーカーから同時に発売されるのは初めてのことでもある。

マイクロソフトはCopilot+ PCについて、1年間で5000万台の需要を見込む(筆者撮影)

インテルやAMDもCopilot+ PC準拠のプロセッサーを、2024年下期に投入すべく準備中だ。マイクロソフトでコンシューマー・チーフマーケティング オフィサーを務めるユスフ・メディ氏は、「1年で5000万台がCopilot+ PCになっていく」と話す。この数字を実現するにはインテルやAMDのプロセッサーを使ったPCが必要、というのが実情である。

だが、オンデバイスAIで機器を変化させていくというトレンドは、「PCといえばx86」という常識に待ったをかけ、新しい競争の時代をもたらしてもいる。こうした変化がどこまで大きな潮流となるかは、Copilot+ PCがどれだけ実用的で、PC買い替えのモチベーションになりうるかにかかっている。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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