最高益の三菱自動車、地域戦略で抱えるジレンマ 主力の東南アが苦戦の一方、"脇役"北米が好調

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「ASEANを強化してきたが、投入してきたリソースやブランド力を考えるとまだ物足りない」。加藤社長はそう強調する。

タイでは2024年2月に投入した自社初のHV(ハイブリッド車)モデルであるSUVミニバン「エクスパンダー」が計画を上回る売れ行きだという。フィリピンでは、2024年3月期販売台数が前期比34%増の8万1473台となり、過去最高を記録するなど力強さを発揮する要素もあるだけに、地域全体での底上げが課題となる。

一方、投資の優先度を引き下げたはずの北米事業は好調が続いている。2024年3月期に前期比23%増の16.3万台、全体に占める比率は20%と1年間で4ポイントも上昇した。アウトランダーの好調に加えて、販売奨励金も抑制できており、北米事業の営業利益は同36%増の1119億円と全体の6割を稼ぎ出した。

今期はさらに13%増の18.5万台を見込んでおり、目下、北米事業が三菱自にとっての“ドル箱”と言える。この状況に三菱自社内では「北米にも経営資源をさらに振り向けるべきではないか」との声も上がっているという。

アライアンスの活用か、自前での再進出か

三菱自が北米戦略のキーと位置づけるのは日産とのアライアンスだ。今後は1トンピックアップトラックの共同開発・生産やPHV(プラグインHV)・EVの投入に向けた相互協力を進めていく方針だ。

現状、加藤社長は「グローバルでバランスを取ることが大事。北米に必要な車の投入は行うが全体を考えた形になる」と強調する。

北米では、現地での車両組み立てや材料調達で一定の比率を満たしたEVの新車のみに税控除が行われるインフレ抑制法(IRA)が導入された。三菱自は2015年に北米生産から撤退しているため、もう一段の販売拡大を追うなら何らかの形での現地生産の新車投入が求められる。

ASEANへの集中を継続するのか、いったんは諦めた北米に再進出するのか、アライアンスを生かすのか。市場の変化も激しい中で、難しい選択を迫られている。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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