最高益の三菱自動車、地域戦略で抱えるジレンマ 主力の東南アが苦戦の一方、"脇役"北米が好調

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縮小

合理化を進めてきた成果も出た。

三菱自は、日産自動車の傘下となった2016年以降、欧州や中国などで積極的に生産能力を拡大した。しかし、計画通りには販売台数が積み上がらず、余剰生産能力を抱えて固定費負担が増加。2021年3月期には3000億円以上の最終赤字を計上した。

加藤社長は、2021年4月の社長就任以降、縮小均衡による筋肉質な経営体質への転換を図ってきた。欧州での自社単独による新型車開発の凍結に加え、ロングセラーだったSUV「パジェロ」を生産する国内工場を閉鎖し、希望退職を募集するなど固定費を2割以上削減する合理化策を実施した。

2023年10月には深刻な販売不振に陥っていた中国事業から撤退を決断。ステランティスと合弁で運営していたロシア事業についても、2023年6月までに生産の再開をしないことを決定。ロシアメディアによると、今年5月までに補償金約50億円を支払い、SUVの委託生産契約を終了した。こうした能力縮小が収益改善に貢献した。

中国勢の攻勢受けるASEANで伸ばせるか

会社は2025年3月期について、売上高は前期比3.2%増の2兆8800億円、営業利益は同0.5%減の1900億円とほぼ横ばいを予想する。販売台数は10%増の同89.5万台を見込むものの、販売関連経費の増加などで利益が伸び悩むという。

中期経営計画では、2026年3月期に営業利益2200億円、販売台数110万台の目標を掲げているが、特に販売台数では乖離が大きい。達成に向けた舵取りで頭を悩ませるのは地域戦略だ。

三菱自の新車販売の3割を占めるASEANでは、生産拠点を構えるタイや最大市場のインドネシアを軸にシェア拡大をもくろんでおり、2025年3月期は前期比15%増の27万7000台を見込む。

しかし、調査会社マークラインズによると同社のタイでの1~3月期販売台数は7587台と前年同期比3割減。インドネシアでは1~4月期販売台数が2万3115台と同2割減と苦戦を強いられている。

ASEANでは近年、BYDをはじめとした中国系EVメーカーが続々と進出、安値EVを投入するなど攻勢を強めている。タイでは自動車ローンの審査厳格化による市況環境の悪化も懸念されており、15%増のハードルは高そうだ。

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