幸せの国ブータンの食卓で見た「幸せの現実」 「毎日同じ夕食でも幸せ」と話す深い意味

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自らの体験および文献に書かれていることを集約すると、おおむね以下3つになる。

① 仏教に根ざす「執着しない」思想
 ② 地形的・政策的閉鎖性
 ③ 自国文化や伝統を重んじる教育・政策

経済的な豊かさを追い求めすぎない

① 仏教に根ざす「執着しない」思想

ブータンは、仏教を国教とする。人々は非常に信仰深いとされるが、確かに信仰は生活の隅々に浸透している。山道にはカラフルな仏教旗がはためき、寺によく行くし、普通の家にも寺の役割の一室がある。

寺の行事には大勢の人が集まり、奉仕し食事を共にする(筆者撮影)

ブータンにおける仏教思想で重要な概念として、京都大学の熊谷誠慈准教授は「輪廻」を挙げている。輪廻とは、苦しみに満ちたこの世で生まれ変わりを続けること。仏教に基づく究極的な幸福は、この輪廻を外れた「涅槃」に至ることであり、これこそがブータン仏教徒たちの目指す最終目的地であるとされる。

地位や富や名誉は、現世において確かに重要だ。それを認めた上で、ただし究極的なものではなく、それを追い求めると執着を生んで逆に不幸になると言う。

これをGNH的文脈に置いてみると、「経済的に豊かになることは大事でないとは言わないけれど、それだけを追い求めてガツガツするときりがないし決して満たされることはないから、物質的なことばかりに執着せず精神の平穏を目指そう」と言い換えられる。

②地形的・政策的閉鎖性

ブータンを地図で見ると、険しいヒマラヤの山中にあり、北は中国と南はインドという2つの超大国に挟まれている。しかもチベットと接する中国側国境は、ダライラマ14世亡命以降閉じていて、現在はインド側が唯一の陸路国境だ。簡単に行ける土地ではないこともあり、外界と隔離されてきた。

地形的な閉鎖性に加えて、政治的にも1970年代まで鎖国政策をとっていた。外国人が旅行できるようになったのは1974年、インターネットとテレビが解禁されたのが1999年。最近だ。

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