アルツハイマー病を確実に引き起こす「遺伝子」 既存治療薬が危険な患者に新たな治療法も
新薬開発の試みのほかに、APOE4をAPOE2というアルツハイマー病に対する保護因子になるとみられる変異型に変える遺伝子編集を研究している研究者もいる。また、APOE2を患者の脳に注入する遺伝子治療法も研究されている。
今回の研究には、知見を一般化しにくくする可能性のある多様性の欠如など、いくつかの限界がある。研究の対象となった患者の大部分はヨーロッパ系のためだ。
APOE4が2コピーあれば、ほかの民族でもアルツハイマー病のリスクは大幅に増加するが、リスクの度合いは異なると、スタンフォード大学医学部の神経学者で、今回の研究には関与していないマイケル・グレイシャス博士は述べた。
専門家によれば、変異体が2コピーあれば疾患の原因となるが、1コピーならリスクが高まるだけという「半優性」と呼ばれるこのような遺伝的パターンに従う病気は珍しい。
変異体検査を受けることの危険性
今回の新しい研究により、APOE4変異体を持っているかどうかを調べるために検査を受けるべきかどうか、といった疑問が生じるだろう。
グレイシャス博士は、APOE4が2コピーある人に対する治療法、あるいは認知症になるのを防ぐ治療法の臨床試験が行われるようになるまでは、「症状がないのであれば、APOEの状態の把握は、間違いなくやめておくことを勧めする」と述べた。
「現時点では、心痛の原因となるだけだ」と博士は言う。
一方でスパーリング博士は、このような患者を助ける方法はすぐには見つからないとし、こう付け加えた。「患者は両親の認知症を目にしていることが多く、切実な状態にあり、本当にセラピーを必要としている」。
(執筆:Pam Belluck記者)
(C)2024 The New York Times
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