アルツハイマー病を確実に引き起こす「遺伝子」 既存治療薬が危険な患者に新たな治療法も
専門家によると、APOE4ホモ接合体として知られる2つのコピーを持つ人は一般人口の2〜3%に対し、アルツハイマー型認知症患者では15〜20%を占めると推定される。1つのコピーを持つ人は一般人口の約15〜25%で、アルツハイマー型認知症患者では約50%だ。
最も一般的な変異型はAPOE3と呼ばれるもので、アルツハイマー病のリスクに対する影響は中立的だとみられている。一般人口の約75%がAPOE3を1コピー持ち、一般人口の半数以上が2コピー持っている。
遺伝性アルツハイマー病の分類が重要なワケ
今回の研究に関与していないアルツハイマー病の専門家は、APOE4を2コピー持つ状態を遺伝性アルツハイマー病と分類することは、この分野で近年焦点となっているアミロイドを標的として減少させる治療法を超えた薬剤開発を促すなど、重要な影響を与える可能性があると話している。
ニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学のアルツハイマー病研究者、サミュエル・ガンディ博士は、この研究には関与していないが、APOE4が2コピーある患者は、抗アミロイド薬による安全性のリスクが非常に高いと語る。
昨年、アメリカ食品医薬品局(FDA)が抗アミロイド薬レケンビ(一般名レカネマブ)を承認した際、特にAPOE4が2コピーある患者には、脳の腫れや出血などの「重篤で生命を脅かす事象」を引き起こす可能性があるというブラックボックス(黒色の枠で囲まれた)警告をラベルに記載することを義務付けた。そのような患者にはレケンビの点滴静注を行わないという決定を下した治療センターも少なくない。
ガンディ博士をはじめとする専門家は、このような患者を明確に遺伝性のアルツハイマー病と分類することは、彼らにとって安全で効果的な薬剤の開発に対する関心を喚起し、まだ症状のない人々の認知機能低下を予防する現在の取り組みにさらなる重要性を持たせることになるだろうと話している。