アルツハイマー病を確実に引き起こす「遺伝子」 既存治療薬が危険な患者に新たな治療法も
関係しているのは、APOE4と呼ばれる遺伝子変異体だ。この変異体のコピーを1つ受け継ぐとアルツハイマー病の発症リスクが高まり、両親から変異体のコピーを2つ受け継ぐと大幅にリスクが高まることは、かなり前から科学的にわかっていた。
学術誌『ネイチャーメディシン』で発表された新たな研究は、APOE4のコピーを2つ持つ500人以上のデータを分析したもので、これまでの研究の規模を大きく上回る。
研究チームは、これらの患者のほぼ全員がアルツハイマー病の生物学的病態を発症していることを発見、2つのAPOE4コピーは単なる危険因子ではなく、アルツハイマー病の原因とみなすべきだと述べている。
ほかの型より10年早く症状が表れる
さらに、これらの患者は比較的若くしてアルツハイマー病の病態を発症したことも明らかになった。55歳までに95%以上がアルツハイマー病に関連する生物学的マーカーを有し、65歳までには、ほとんどすべての患者でアルツハイマー病の特徴である脳内プラークを形成するアミロイドと呼ばれるタンパク質が異常なレベルに達していた。そして多くは、APOE4変異体を持たない人々の大部分よりも若い65歳で認知機能低下の症状が出始めた。
「極めて重要なことは、これらの人々には、ほかの型のアルツハイマー病よりも10年早く症状が表れることが多いということだ」と、ボストンのマス・ジェネラル・ブリガム病院の神経科医で、研究の執筆者の1人であるレイサ・スパーリング博士は述べた。
「診察を受け、臨床的に診断される頃には、こうした人々はより若いことが多いため、多くの病態が生じている」と博士は言う。