世界の建築にも影響、日本発「メタボリズム」の正体 西洋建築と日本の歴史を通して見えてくるもの
完成したのは、1972年。ミノル・ヤマサキのプルーイット・アイゴーが解体された年だったのは、単なる偶然なのでしょうが、なんとなく歴史の因縁のようなものを感じたりもします。
中銀カプセルタワービルは、残念ながら2022年に解体されてしまいました。つまりメタボリズムは西洋建築史の大きな潮流にはならなかったわけです。
世界的な潮流の先駆けでもあったメタボリズム
しかしモダニズムが行き詰まりを見せる中で、非西洋の日本から新しい建築運動が生まれたことには、歴史的な意味があったと思います。というのも、1980年代の初頭に、建築の世界では「クリティカル・リージョナリズム(批判的地域主義)」と呼ばれる考え方が生まれました。
ちょうど、モダニズムに対する反動としての「ポストモダニズム」が盛り上がり、「何でもアリ」の奇抜な建築が次々とつくられていた時期のことです。
その流れに批判的だった建築史家ケネス・フランプトンをはじめとする人たちが、クリティカル・リージョナリズムを提唱しました。
これは、文字どおり「地域性」を重視する考え方です。ギリシャ・ローマ建築以来、西洋建築はある意味で普遍的なものとして世界を席巻してきました。
モダニズムはその究極の様式と言ってもいいでしょう。どこの国や地域であろうと、モダニズム建築は同じような美意識によってつくられます。
しかしそれでは、行き詰まりを打開できない。そこで、それぞれの地域の歴史、文化、気候風土などを取り入れることで新しい建築を生み出そうというわけです。移り変わる自然との共生を大事にする日本人が志向したメタボリズムは、そういう潮流の先駆けだったといえるかもしれません。
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