世界の建築にも影響、日本発「メタボリズム」の正体 西洋建築と日本の歴史を通して見えてくるもの

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そのルネサンス建築は、やがて「バロック」や「ロココ」と呼ばれる華やかな装飾スタイルを生み出しましたが、それが過剰になって飽きられるようになると、よりシンプルな建築が求められるようになります。

ここでも、参照されたのはギリシャ・ローマの建築。18世紀末には、「新古典主義」と呼ばれる流れが生まれました。その後、建築史に大きな転換をもたらす要因となったのは、産業革命です。

技術革新によって大量生産が可能になった世界では、何よりもスピードや効率が価値を持つようになりました。そういう社会的な変化を受けて、建築の世界でも装飾が否定され、機能性や合理性を重視する「モダニズム」が生まれます。

1960年代には行き詰まっていた?モダニズム建築の事実

建築にあまり詳しくなくても、フランスのル・コルビュジェ(1887−1965)という建築家の名前を見聞きしたことのある人は多いでしょう。彼は、20世紀のモダニズム建築を主導した重要人物のひとりです。

たとえば、戦後国際建築家チームの一員として設計に参加したニューヨークの国際連合本部ビルや、日本で唯一の作品である東京の国立西洋美術館など、ル・コルビュジェが計画や設計を手がけた建築を見れば、モダニズムの特徴は一目瞭然。

国立西洋美術館
モダニズムの特徴が一目でわかる東京の国立西洋美術館(写真:t.sakai/PIXTA)

機能主義と合理主義に徹した、装飾のない幾何学的な「箱」のような建築です。このモダニズムに対しては、美意識の面からさまざまなアンチテーゼが投げかけられました。ヨーロッパに加えて、米国や日本が西洋建築史の表舞台に出てくるのも、この頃からです。

ちょっと先回りしてお話ししておくと、モダニズム建築は1960年代にはすでに行き詰まっていました。世間的には最先端の新しいビルなどを「近代建築」と呼んだりするので、60年も前に行き詰まっていたと聞くと意外に感じるかもしれません。

でも建築家にとって、「モダニズム」はとっくの昔に新しい概念ではなくなっています。それに関連して、ここでひとつ、個人的にもちょっと思い入れのある建築を紹介しておきましょう。

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