生徒1人に1台の情報端末が配られるのに合わせ、教員用にも複数台が配備された。ただ教員全員分はなく、職員室から持ち出せない。
2021年度、コロナの感染拡大で密を避けようと、職員会議をオンラインで開くことになった際も、参加者のほぼ全員が職員室にいたという。
女性はテストの採点などの仕事を持ち帰って、在宅での仕事の合間や移動中の電車などでこなしたい思いがある。持ち帰りもできないため、学校外からデータにアクセスできず、学校に遅くまで残ることになる。
さまざまな配慮で前へ進めない
保護者との連絡方法も気になる。
女性の勤務校では、放課後の職員室で、多くの教員が保護者に固定電話から連絡し、不登校の家庭に日々の様子を聞き取ったり、欠席だった子に必要なことを伝えたりする。保護者の仕事の都合で連絡がつくのが夜になってから、ということも少なくない。
相手の携帯電話にかけることで不在着信が残り、折り返し待ちのために遅くまで帰宅できない姿もよくみる。メールやLINEでのやりとりや、教員が自宅から携帯などで電話することは認められていないためだ。
女性は疑問に思い、理由を同僚に尋ねてみた。
メールなどではやりとりが記録され、教員の名前とともにネット上などでさらされる恐れがある。そんな説明を受けた。理屈はわかるが、長時間労働の温床になっていることを考えると、合理的とは思えない。
学校にこうした決まりがあるのに、理由がないわけではない。保護者と教員のメールなどを禁じている都内の小学校の校長は言う。
「家庭と個人的な関係をつくり、悪用する教員がいるかもしれない。ごくわずかでも可能性があれば、子どもを守るためにルールは必要になる」。