回収したら、それを担任が表計算ソフトに入力する。この作業だけでも3時間ぐらいかかる。いまやオンラインのアンケートフォームは、無料アプリで簡単に作れる。
女性はそう考えて改善を提案した。だが、年配の教員から「面倒くさい」「これまでのやり方の方が早い」と言われてしまった。
子どもの学習評価などを書き込む「指導要録」は、すべて手書き。通知表のもととなる公文書だが、通知表とは違って原則外部が目にすることはない。
なのに、教員は一文字でも間違えれば、すべて最初から書き直している。導入済みの校務支援システムと連携してデジタル上で入力できるようにすれば、間違えてもすぐ消せるし、子どもの名前やクラスなどの基本情報を盛り込む手間が省けるはずだ。
女性がさらに驚いたのは、ソフトの独特な使い方だ。パソコンで文書をつくるソフトは「一太郎」と決まっている。外部と共有する際はコンバーターをつかって「ワード」に変換して送っている。これも一手間だ。
ICT技術を避けるような雰囲気も?
女性は特に、若手教員への影響を心配する。
大学在学中はオンライン授業を受け、様々なデジタル技術を使ってきたはず。なのに、学校では職員会議の資料をプリントアウトしてホチキスどめする仕事を与えられる。
若手が、プリントアウトした紙資料をコピーするために印刷機の行列に並んでいるのを見た。ただでさえ、なり手が少ないのに、あまりの非効率に嫌気がさしてやめてしまうのではないか。
「先生には業務を効率化し、教材研究や授業準備にこそ時間を使ってほしいのに」
ベテラン教員を中心に、ICT技術を避けるような雰囲気があるとの指摘もある。
都内の公立中学校に勤める非常勤講師の50代女性は「学校にはITアレルギーがあるように感じる」と話す。授業をした公立2校で、デジタル機器が充実しても改革が進まない実態を目の当たりにした。