(第9回)製造業の海外移転で300万人の雇用減

 

11年5月の完全失業者は293万人である(岩手、宮城、福島の3県を除く)。したがって、製造業から放出される雇用者がすべて失業すれば、失業率は現在より5%ほど高まって10%程度になる。

これは、雇用調整助成金で支えられる限度を超えるものになる。それに、こうした構造的雇用減少を雇用調整助成金のような雇用創出に寄与しない一時的措置で対処することは、そもそも適切ではない。

したがって、こうした状況を正面から見据えることが必要だ。製造業の縮小は不可避であることを認識し、それに代わって雇用を創出する生産性の高い産業を育成することが急務である。

これまでは、「ものづくりこそ日本の使命」として、製造業を維持しようとしてきた。しかし、円安政策は製造業の生産を増やしはしたものの、雇用を回復させることはできなかった。そして、経済危機後は、雇用調整助成金によって雇用を支えてきたのだ。それ以降進行した円高と震災後の電力不足によって、こうした政策では雇用を支えきれないことが明らかになっている。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

 


(週刊東洋経済2011年8月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。写真と本文は関係ありません

 

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