人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか

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太陽以外の恒星を周回している惑星に私たちが旅するとき、たとえその恒星系のハビタブルゾーン〔訳注 恒星系で、主星である恒星からの距離が生物にとって適切な領域。生命居住可能領域〕内に何個か惑星があると予測できても、実際に行ってみたら、人間をはじめとする地球の生物にはまったく適さなかったとわかる可能性もある。

地球の生物が、到着したらすぐ船外に出て、空気を吸い込み、根を下ろし、繁栄と成長をはじめられるような惑星など存在しないことはほぼ間違いないだろう。

これらの新世界の大部分は逆に、有害で、空気はまったく存在しないか、存在しても呼吸には適さないかのいずれかで、土壌には地球の植物を養うのに必要な養分などまったく含まれていない、等々といった状況だろう。

つまり、星間飛行を終えた地球からの移住者たちは、そこに人工建造物を建て、そのなかに閉じこもって余生を過ごすことになるのだ――2つの選択肢の、どちらか1つを行うまでは。テラフォーミングか、あるいは順応か。

ほかの惑星を地球のような環境にする

ほかの惑星を地球のような環境にするテラフォーミングは、何世紀もかかるうえに、どんな結果になるのか予測も付かない事業になるだろう。

このテーマについて真剣に取り組んだ科学論文がいくつも発表されており、対象となる惑星(あるいは衛星)で、大気組成と温度を、そして最終的にはその生態系全体を、地球にそっくりにするため、既存のものを変更するか、もしくはゼロから作り上げるための方法を論じている。

考え方としては新しいものではなく、このプロセスを指すテラフォーミングという言葉は広く使われている。

この言葉は、1942年に出版されたジャック・ウィリアムスンのSF短編小説『コリジョン・オービット(Collision Orbit)』で初めて使われた。それ以来、多くのSF小説に登場したが、描かれ方にどれくらい真実味があるかには幅がある。

たとえばロバート・A・ハインラインの『ガニメデの少年』(矢野徹訳、早川書房)、アーサー・C・クラークの『火星の砂』(平井イサク訳、早川書房)、そしてキム・スタンリー・ロビンスンの火星三部作などが有名だ。

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