一生を宇宙船で過ごす人々が直面する問題とは? 何世代も続く「遠い恒星への旅」の倫理と哲学

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星間飛行に出発した勇敢な人々の子孫がプロキシマ・ケンタウリBに到着したところ、その土には、この系外惑星の固有種らしい見慣れぬ微生物が生息しており、それ以外の動物は見当たらなかったとしたらどうすればいいだろう?

人間たちは着陸を敢行し、そこに居住地を作り、人間と、その体に棲むバクテリアに加えて、ほかの動植物も意図的に地球から運んできて、この系外惑星に導入するのだろうか?

到着した人間たちが既存の動物がいることを発見した場合にはどうすればいいだろう? その動物は意識を持っていないが、やがて進化して意識を持つようになる可能性が排除できないとしたら? 

その場合、倫理の問題は一層難しくなる。彼らが次に何をするのか、誰が決めるのだろう? 移住者本人たちだろうか?

アメリカのテレビドラマ『スター・トレック』シリーズの「最優先指令」のようなものを打ち上げ前から準備しておくのがいいかもしれない。しかし、当初からワールドシップに乗っていた人々は「最優先指令」に同意していたとしても、彼らの子孫は、自分たちが生まれる前に定められたことに従うしかないのだろうか?

技術的困難は解決できるのか?

これらは大きな問題であり、そこにはさらに、答えるのも解決するのも容易ではない多くの課題が伴っている。そしてこれらのすべてが、今私たちが直面しているいくつかの技術的困難を先に解決しておかない限り、意味のないものになってしまう。

まず最も重要なのは、推進にまつわる技術的困難だ。カヌーの段階を脱却し、最初の帆船、あるいはエンジン付きのボートや船を作る段階へと進むには、私たちはどうすればいいのだろう?

(翻訳:吉田三知世)

レス・ジョンソン 物理学者、NASAテクノロジスト

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Les Johnson

物理学者。Graphene: The Superstrong, Superthin, and Superversatile Material That Will Revolutionize the WorldSolar Sails: A Novel Approach to Interplanetary TravelThe Spacetime Warなどの多くの著書がある。NASAの初めての惑星間ソーラー・セイル宇宙ミッションや、NEA Scout、ソーラークルーザーの主任研究者。

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