異様!これが21世紀型「無音ダンスクラブ」だ 音楽が鳴り響かない空間で好き勝手に踊れる

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サウンド・オフ・エクスペリエンスを創業したキャステル・バレリー=クーチュリエ(写真:Benjamin Norman/The New York Times)

婚約者と一緒に来たというジョシュア・ダイアモンド(30)は、普通のクラブよりサイレント・ディスコのほうが「PG度(表現内容の年齢制限)が強い」と語った。なるほど13歳未満の参加者もいることに配慮して、ハウス・オブ・ペインの『ジャンプ・アラウンド』の歌詞に問題のある部分は編集でカットされていた。

運営元のサウンド・オフ・エクスペリエンスを創業したキャステル・バレリー=クーチュリエによると、「成人向けのイベントにしようかと思ったら、親たちからメールが殺到したため対処した」。

偶然このイベントに出くわした人たちは(なにしろ大音響の音楽など聞こえないから、そうと知らなければ誰もわざわざ寄って来ない)、何らかのガーデンパーティーか、カルト集団とでも思ったのではないだろうか。またはジムのトレッドミルで自分だけ聴いている音楽に合わせて歌うような連中かと。

ヘッドホンをつけていない見物人の立場で見ると、即興アカペラ合戦のようでもある。クリス・クロスの『ジャンプ』を口ずさみながら跳ね回る人たちがいるかと思えば、モンテル・ジョーダンの『ディス・イズ・ハウ・ウィ・ドゥ・イット』の歌詞をわめく人たちがいる。

これは孤立する体験なのか、相和する体験なのか。答えは質問する相手によって違う。

(写真:Benjamin Norman/The New York Times)

「自分とだけ踊るわけ」と語ったバーナデット・ゲイ(56)は、ポケットからiPhoneの白いヘッドホンのコードが出ているiTunesの広告塔のような人だ。医療関連会社で働く彼女はちょっとサイレント・ディスコを試したものの、すぐに黒のヘッドホンを返却したという。自分にとって最高のDJは自分自身だと納得したからだ。お気に入りはコロンビアの歌手カルロス・ビベス。「ウォークマンが登場した頃のことを思い出す。孤立するばかりでつながらない」。

その一方で、クイーンズ区のメディア関連会社の役員シャネズ・バーリ(31)は、1人でよくサイレント・ディスコに行くという。「小さな世界に入って、自分の見た目なんかどうでもよくなる。だから気軽にほかの人に話しかける」と、お互いに近づきやすくなるものだと語った。

技術的問題を解消して普及

元祖サイレント・ディスコと言えるのは2005年に英国イングランドのグラストンベリーで開催された。野外フェスで音量制限に対応するためだった。

次いで米テネシー州ボナルーの野外フェスもこれに倣ったが、米国内での普及には技術的な理由もあって時間がかかった。当時使われていた赤外線伝送ヘッドホンは、トランスミッターとの間で赤外線が遮られると音が聞こえなくなる。

「音声が中断したり、雑音が入ったりして、なかなか音楽に浸りきれなかった」と、ワイドスプレッド・パニックやドライブ・バイ・トラッカーズのツアーマネージャーを務めたことがあるライアン・ダウドは言う。彼はその後サイレント・イベンツ社を立ち上げ、ボナルー・フェスティバルやゴーカー・メディアの依頼で無音フェスを運営してきた。最近は短波無線周波数信号を用いるから、かつてのような問題は生じないという。

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