異様!これが21世紀型「無音ダンスクラブ」だ

音楽が鳴り響かない空間で好き勝手に踊れる

無音パーティー請負業としては、ハッシュ・コンサーツ、ゼロdB(0デシベル)など十数社あり、創業者の多くは外国で事業の発想を得た。

バレリー・クーチュリエが初めて経験したのはイスラエルの海岸でのことだった。クイーンズ区のクワイエット・イベンツ社の創業者ウィリアム・ペッツも、4年前にバミューダ諸島へ船旅をしたとき出合った。「ばかみたいだけど、船の上ではこれしかない」と思ったという。

これは面白いと感じたペッツは、ヘッドホンを350個調達した(この事業に失敗したらeベイで売るつもりだったとのこと)。今やヘッドホンの数は6000個を超えた。遠く中国から受注することもあれば、地元のレストラン、ボヘミアン・ホールのビアガーデンでの一夜に1000人が集まることもある。まさに人寄せ企画だと、店の支配人アンドルー・ウォルターズは語った。「これのためにだけ集まってくる客層がいる」。

結婚披露宴、特にリゾート婚は新しい市場だ。ダウドによると、以前はせいぜい年に1~2件だったのが、この1年間で月に数件という頻度になった。マーサ・スチュワートのブライダル情報誌で紹介されて評判になったという。

披露宴会場では、ライブのDJに加えて新郎新婦それぞれの側のためにチャンネルが用意される。「マウイ島とかケイマン諸島とか、別荘貸し切りで何でも自由に出来そうなものだが、夜9時までという時間制限があったりする」と、ダウドは言う。

DJには厳しいが客は大はしゃぎ

3人のDJのうち、どのチャンネルを聴いているかによって、各々のヘッドホンが赤、青、緑色に分かれて光る(写真:Benjamin Norman/The New York Times)

DJカリスマの異名を持つキム・スコラロ(31)に言わせると、サイレント・ディスコはほかの種類のパーティーよりずっと難しい。

「DJが自分だけなら何でも好きなことがやれるし、手抜きもできる」と、シーポート地区のイベントに出ていた彼女は語った。「でもここでは常に全力投球。好まれる曲、好まれない曲、その場で歴然とする」。一部の音楽祭では、DJ合戦にならないよう、主催者側がチャンネルをひとつしか設けないこともある。

シーポート地区のイベントでは、緑色のチャンネルのDJが「騒いでみようよ」と呼びかけた。するとひとりの女性は「この曲で踊ったのは、誰かのバルミツバー(ユダヤ教の成人式)」と叫んだ。このとき流れていた曲はアイズレー・ブラザーズの『シャウト』だった。

かと思うと、どこからともなくコンガ・ダンスの行列が始まった。チャンネルを変えてみると、グロリア・エステファンの『コンガ』も流れていたのだ。

夜11時前、デコダー・ローニー(23)は15センチのヒールのブーツを脱ぎ捨てた。石畳で踊るのに「これを履いてると楽しめない」からだ。ちなみにヘッドホン着用のため、イヤリングを外す人はすごく多い。トリニダード島出身のローニーはこう語った。「いつもリズム感がないと言われるけど、ここに来れば大丈夫」。なぜなら、まわりの人とは別の曲に合わせて踊っていると言い訳できる。

ニコール・ランシア(34)とケリー・ウォッシュバーン(33)の友達ペアは、笑ったり踊ったり人間観察をしたり。近くの店で夕食に寿司を食べた帰りに、このイベントに出くわしたという。「サイコーよ。シャワーを浴びながら歌っているときみたい」と、ランシアはご機嫌だ。彼女とウォッシュバーンは、1人の女性がホイットニー・ヒューストンの『アイム・エブリ・ウーマン』を熱唱しながら、息子2人と一緒に踊るのを眺めている。

「私も同じのが聴きたい」とランシアは言った。

(執筆: Courtney Rubin記者、翻訳: 石川眞弓)

© 2015 New York Times News Service

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