漫画村に「17億円賠償命令」でも変わらぬ深刻実態 海外サイト、SNSで増殖し続ける「タダ読み」

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実は同じ著作物でも、音楽については対策が進んでいる。

ユーチューブでは、独自の著作権管理システム「Content ID」によって、投稿動画に使われた楽曲を自動で検知する仕組みが採られている。

Content IDによって登録した楽曲が検知されると、その動画を視聴できないようにブロックしたり、動画の収益の一部を、著作権管理を行うJASRAC(日本音楽著作権協会)やNexToneなどを通じて音楽クリエーターや音楽出版社などの権利者へ分配したりすることができる。

実際、2022年6月までの1年間でユーチューブが世界の音楽業界に分配した60億ドルのうち、30%程度がContent IDによるユーザー投稿動画からの収益還元となっている。

SNSに月2万件の削除要請も

一方で漫画などの出版物に関しては、今のところ自動検知に有効なツールがなく、収益が権利者に分配されることもない。

現状では、出版社側が漫画を掲載している動画を自力で探し出し、著作権侵害の有無を判別したうえで、1つひとつ削除を要請している。ある出版社はSNSや動画投稿サイトに対し、月2万件もの削除要請を行ったこともあったという。

こうした状況についてグーグル日本法人に今後の対応を問い合わせたところ、広報担当者は「YouTubeにとって著作権は非常に重要な問題であり、長年にわたりさまざまな対策をとっています」との回答にとどめた。

ユーチューブをはじめとしたSNSは多くの人にとって日常の一部と化しているだけに、そこでタダ読みが放置される影響は計り知れない。前出の中島弁護士は、「(著作権を侵害しているコンテンツを)軽い気持ちで見ることに慣れてしまうと、著作物に対価を支払うという価値観が崩壊する。そうなれば取り返しがつかない」と警鐘を鳴らす。

本来支払われるべき対価が得られなければ、漫画家が創作活動に打ち込める環境も崩壊しかねない。日本が世界に誇る漫画文化の未来を守るには、政府やプラットフォーマーを巻き込んだ総力戦が不可欠だ。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、コンテンツ、コンサル業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。

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