『silent』手掛けた敏腕P「企画書は見た目が9割」 わかりやすくできないなら企画自体を捨てよう
もう一つは、サラリーマンである僕が、上司や編成など決定権を持つ会社の人たちにアピールするという角度。「この企画、面白そうでしょ。これにベット(確信をもって信じる)しませんか?」という見せ方になります。つまり、「これ、当たりそうでしょ? 当たりますよ、絶対!」というやつです。正直なところ、本当に当たるかどうかなんて分かりません。
それが分かるなら、僕はきっと、ディズニーランドならぬ「村瀬ランド」を作れているはずです。でも、「当たるかも」と思わせることはできます。「これは絶対に当たります!」を、自分なりの根拠と共に語り、決定権を持つ人に「確かにこれは当たりそうだな」と思わせる。そのための書き方、見せ方を僕はいつも意識しています。
この2つは、外部向けと内部向けであり、情熱的な見せ方と実務的な見せ方と言うこともできるかもしれません。僕は企画書を作る時、この2つの見せ方を意識しています。
企画を象徴する写真が旗印となる
企画書の表紙には一枚の写真。
先ほど、企画書の「2つの見せ方」という話をしましたが、見せ方は2つでも目的は一つです。それは、相手に「面白い」と思わせること。「つまらなそう」と思われて企画書のページをめくる手が止まるのは、こちらとしては絶対に避けたいことです。極論ですが、企画書は相手に見せた瞬間に「面白そう」と思わせるくらいの方がいい。ということは、企画書の表紙が大事になってきます。
企画書の1枚目を見た時に「面白そう」と思わせるためにはどうすればいいか。僕のやり方は、表紙に写真を一枚だけドンと置く、というスタイル。表紙に置く写真の絵柄は、その企画のイメージを自分の中で膨らませていった先にあるような、企画を象徴するものにします。
『silent』の企画書の表紙にも、一枚の写真を置きました。真っ白な雪原の中に木が一本だけ立っていて、その向こうにはうっすらと穏やかな日差しが差し込んでいる写真です。
劇中に雪原のシーンは一回も出てきません。だけど、僕の中では『silent』の企画を思いついた時のイメージがこの雪原でした。『silent』というタイトルもこのイメージと同時に決めていたので、『silent』というすべて小文字のアルファベットも、雪原に立つ一本の木とともに企画書の表紙に入れ込んであります。
この本の中で何度か「同じ船に乗る」という言い回しで、企画を進める仲間たちについて語ってきました。その船の旗印となるのが、企画書の表紙のイメージなのかもしれません。チーム全員で一つのイメージを共有するという意味でも、企画書の表紙にはかなりこだわっています。
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