『silent』手掛けた敏腕P「企画書は見た目が9割」 わかりやすくできないなら企画自体を捨てよう

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見せる相手に合わせて微修正。

細部の話になりますが、企画書の色使いやフォーマットなどにも注意を払っています。色使いやフォントは、企画書の見た目を少しでも良くするために手をかけている部分。企画書のタイトルを何色にするか、文字の大きさをどうするか、それだけで2時間くらいかけることもあります。企画書のフォーマットは、過去に自分が作ったものをずっと使い回しています。

PowerPointのデザインを使いつつ自分なりに作り上げたスタイルなので、パッと見の印象がほかの人の企画書と被ってしまう、ということがまずありません。それに、同じフォーマットを使い続けていると、レイアウトを見るだけで僕の企画書だということが伝わるというメリットもあります。フジテレビの上層部や編成の皆さんはきっと、表紙を見ただけで僕の企画書と分かってくれているんじゃないかと思っています。

また、見せる相手に合わせて企画書の見せ方を少しずつ修正することも少なくありません。役者さんに見せる時には、その人の役どころが一番分かりやすくなるように説明を増やしたりします。

「見た目」の次に大事なのは「分かりやすさ」。

当然ですが、どれだけ見た目が良くても、中身が分かりにくい企画書ではダメ。企画書で「見た目」の次に大事なのは「分かりやすさ」です。かと言って、長々と文章で説明するのも逆効果だと思います。僕がドラマや映画の企画書を作る時に目指している分量は、できれば1ページか2ページ、多くても5ページくらいまでです。そして5ページ見たら中身が分かるように、内容を簡潔にまとめることを意識しています。

5ページで表現できないような面白さも世の中にはあるのでしょうが、簡単な説明で伝わらないものは、作品が完成しても結局は伝わらない、と僕は思っています。なので、企画書を作る時には、分かりやすくできないなら企画自体を捨てる、面白い企画書にならないのであれば中身もきっと面白くない、そういう感覚で作っています。

AIはエモい企画書を作れるのか?

企画書はラブレター。

ご多分に漏れず、うちの会社でも少し前にChatGPTが話題になったのですが、同僚の中には試しにChatGPTに企画書を作らせた人もいました。その同僚によると「ChatGPTはそれなりにいい企画書を作ってくるけど、エモさがない」とか。エモさがない、というのは、情熱がないとか、この企画を実現したいという“想い“が伝わらないとか、色々ありますが、とにかくエモさがない、と。「こういう気持ちの部分は、やっぱりAIにはできないんだな」とその同僚は納得していました。

巻き込む力がヒットを作る "想い"で動かす仕事術
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AIと張り合うわけではありませんが、僕の企画書にはそういう“想い”はかなり乗っていると自負しています。「絶対にこれをやりたいんです!」とか「必ず当てます!」とか、そういう気持ちで企画書の隅々まで埋め尽くされている。

企画書はラブレターみたいなもので、自分の“想い”を相手に伝える場です。人の“想い”は、企画書を作った人から企画書を見る人へ、ちゃんと伝わっていくものだと信じています。だから、伝わるように書いた方が、絶対にいい。そう思っているから、僕は、AIには企画書作りを任せないし、自分と同じようなエモい企画書はAIには作れないはず!と思っています。

村瀬 健 テレビプロデューサー

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むらせ けん / Ken Murase

1973年生まれ、フジテレビプロデューサー。早稲田大学卒業後、日本テレビに入社。『火垂るの墓』『14才の母』などのヒットドラマを手がけたのちに転職。フジテレビ入社後は『太陽と海の教室』『BOSS』『信長協奏曲』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』などを手がける。映画でも『信長協奏曲』『帝一の國』『約束のネバーランド』『キャラクター』等のヒット作品を送り出す。2022年に手がけたドラマ『silent』が大ヒットを飛ばし、累計見逃し配信数で民放歴代最高記録を樹立。2023年『いちばんすきな花』放送。

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