「レコード大賞歌手」の彼女が選んだ意外なその後 1曲1000円で歌う、ゴールデン街の「流し」の生き様

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流しが歌う曲は、かつては演歌が主流だったが、Be-Bさんのレパートリーは海外のロックやポップスが中心。日本の歌謡曲にも対応できるが、基本的には「ハードロック流し」と名乗っている。黒で統一された衣装や力強いまなざしからも、ロックシンガーの風格が漂う。

料金は1曲1000円。平均すると週3~5日、21時から朝方まで、1日10~30軒を回って客のリクエストに応える日々だ。

(撮影:梅谷秀司)

Be-Bさんは2016年から流しを始め、コロナによるブランクを経て、2021年から本格的に活動を再開。今やすっかりゴールデン街の名物として、ベテランの酔客から、流しを初めて見る若者や外国人まで、多くの人々を楽しませている。

1日に5万円近く稼げる日もあれば、数千円のときもある。収入的には不安定だが、それでもBe-Bさんは流しの活動に誇りを持っていると話す。

「流しって、昔は蔑称で呼ばれることもあった芸人なんですが、芸能界のいしずえをつくってきた人たちでもあるんです。戦後のラジオやレコードしかない時代に、譜面を手書きして、夜どおし飲み屋やキャバレーで生演奏をして歌う。そして人気の出た歌手が芸能界を築いていったんですね。歌手にとって原点である、現場で歌うこと。それができているのは本望ですし、胸を張れます」

デビュー1年目でレコード大賞新人賞を受賞

だが現在に至るまで、Be-Bさんの音楽人生は激しい浮き沈みがあり、栄光も挫折も味わってきた。

幼少のころから歌うことが好きだったBe-Bさんは、親戚の集まりではおもちゃのマイクを持って歌を披露、小学校2年生の文集では「歌手になりたい」と書いた。中学生のころ、兄が家でよく洋楽をかけており、ハードロックに夢中になる。コピーバンドを結成し、Be-Bさんはボーカルとして、中学・高校と打ち込んだ。高校卒業後は歌手になるために上京し、さまざまな仕事をしながら音楽活動を行った。

「最初は寮のあるレストランに入社したのですが、拘束時間が長くて、これじゃ音楽活動ができないなと。1年弱で辞めて、フリーターのロック姉ちゃんになりました。カラオケスナックでバイトもしたし、当時はキャバクラに箱バン(生演奏のバンド)が入っていたので、働きながら歌ったりもしました」

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