新潟市がiPadを使った「教育DX」成功できた理由 iPad導入で空いた時間を授業準備に充てられる

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生徒たちはWi-Fiを通じた画面共有機能「AirPlay」で教室の大きなディスプレーにスライドを映し、自分の席にいながらそのスライド内に自分のしゃべる様子を表示させ、大きな声で発表する。

いちいち席から立って前に出てきたり、自分の端末をHDMIケーブルでつなぎ替えて、画面が映る・映らないと右往左往したり、といったタイムロスはない。その代わり、発表した内容に対して、クラスの友人から「あとづけ」で意見が次々に加えられていく。

ここでは、自分たちで考え、アイデアを共有し、フィードバックをもらいながらさらに理解を深める、というプロセスが丁寧に組み立てられていた。

社会の授業では、新潟県の自治体の特色を調べ、それを生かしたロゴデザインやポスターを制作するという授業が行われていた。社会と図工といった教科の別にとらわれず、表現方法としてのデザインを自然に考えている点に驚かされる。

しかも、教室の生徒が一斉に1つのボードを編集できるアプリ「フリーボード」を使っており、アイデアから制作まで、生徒間で確認しながら進んでいくため、良い色使いやテクニックを真似て、教室全体の完成度が上がっていく様子が興味深かった。

「やさしいDX」が成功した理由

池田浩
新潟市教育委員会教育次長を務めていた池田浩氏(取材当時)。教員としての現場経験と、行政での経験から、教育のDXを設計・実施する強力なリーダーシップを発揮した(筆者撮影)

新潟市で、GIGAスクールに関連して、教育のDXの先頭に立ってきたのが、新潟市教育委員会で2024年3月まで教育次長を務めてきた池田浩氏。

「誰ひとり取り残さない、が新潟市の取り組みのキーワードでした。この『誰ひとり』の対象は、子どもたちのことだと多くの人が思われるでしょうが、ここには教職員も含まれるよう、注意してきました」(池田氏)

1985年に中学校の技術課の教諭としてキャリアをスタートした池田氏は、中学校の校長まで務め、2012年に新潟市教育委員会に転属となった。

現場を知りつつ、行政も知っている、そんな異例のキャリアを持つ池田氏だったからこそ、子どもたちと教職員の双方を取り残さない、教育のDXの設計に携われたという。

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