サイゼリヤ、ギリギリ「国内黒字化」も残る難題 国内事業の利益率0.05%、値上げなしで大丈夫か

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営業利益が低水準だったことについては、「売り上げが想定よりも伸びたため、在庫が不足した」(松谷社長)ことが大きな要因だったという。

サイゼリヤは、基本的に食材を自社工場で製造している。売り上げの伸びに対して生産が追いつかず、在庫量が減少。食材の生産を外部に委託したことなどで仕入れコストがかさんだ。

また、海外からの輸入も滞った。昨年末からイスラエルのガザ地区への攻撃を発端として、イエメンの反政府武装組織のフーシ派による紅海を航行する船舶への攻撃が発生。欧州から仕入れるパスタやオリーブオイルは、紅海を避け、南アフリカの喜望峰経由での輸送になった。

さらに、肉類やミートソースの工場がある豪州で港湾ストライキが発生。空輸などで対応し費用がかかった。足元では仕入れ計画や生産計画を見直し、影響は小さくなっているという。

国内は値上げなしで計画に届くのか

前述のように、今期の国内事業の営業利益計画は20億円。サイゼリヤはもともと下期に稼ぐ企業だが、このまま達成できるのか。

3月にはメニュー改定の効果が発現し、既存店売上高は29.1%増だった。同月に14.4%増だったすかいらーくや12.7%増のすき家と比較しても好調だ。松谷社長は「組み合わせて食事を楽しむメニュー構成が浸透している」と手応えを語る。

また、一部メニューの削減を実施するなど効率化も進めてきた。セルフレジは今2024年8月期に、テーブルオーダーも2025年8月期にそれぞれ全店舗へ導入を予定している。

ただし、他社チェーンのように全面的に商品を値上げしなければ、収益面で一段と厳しくなる可能性もある。2024年も円安などで食材の価格が高止まりし、人件費やエネルギーコストも上昇しているからだ。

これまで「国内では賃金水準が上がっていなかった」(松谷社長)として値上げをしてこなかったサイゼリヤ。国内事業で肝心の利益をどう生み出すのか、一段と踏み込んだ決断が求められそうだ。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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