入学式取材で見えた「東大新入生」のリアルな変化 「将来像これから」「政治の話は引いてしまう」
藤井総長が、新入生に課した「最初の宿題」。これは、多くの東大生が育ってきた環境を念頭の1つに置いた発言かもしれない。近年、家庭環境で人生が左右される状況を意味する「親ガチャ」という言葉が流行語になり、東大合格と、世帯収入や出身地域との相関性を指摘する議論もよく見かけるようになった。
なぜ東大に入れたのか、自らが置かれてきた環境と役割を見つめ直し、持てる力を社会に役立ててほしい――。藤井総長の洗練された言葉は、そうしたメッセージを感じさせるものだった。
理科一類の男子学生は式の後、「すごく心に響く言葉が多かった。今後の学生生活でどういうところを目指していけばいいか、少し考えさせられた感じがしている」と感想を話した。
女子学生の割合は昨年から低下
「構造的差別」の例として、藤井総長が具体的に挙げたのが、女子学生の割合だ。
東大は2021年に示した基本方針の中で、女子学生の比率を3割まで高めていく目標を掲げている。だが、今年の入学生3126人のうち女子学生は646人で20.7%にとどまり、昨年の22.6%から逆に低下する結果となった。
先の男子学生は「僕のクラスは女子が1人もおらず、残念ながら、理系では男女の差はとくに激しい」と明かす。一方、文科三類の女子学生は「個人的には、他大学が女性枠を設ける中で、女性枠がない東大のほうが自分の実力で入れた感じがして好きだ。ただ、そもそも受ける女性の人数が少ない。東大に限らず、日本全体で女性が上を目指す意識が低い雰囲気を感じる」と話した。
性差の問題については、入学生総代を務めた文科三類の山際美愛さんも宣誓の中で言及している。
「女性だから男性だからという二元論を毎日のように耳にする。私自身振り返ると、何か決断する時に自分の性別を言い訳にしているときがある。生まれ持った性別にかかわらず、個人個人が社会で輝くには、私たち1人ひとりが自覚なく持っている偏見をなくそうと努力する必要があるのではないか」
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