OpenAIが日本進出、注目集める「引き抜き社長」 東京に拠点開設、人事・製品戦略に透ける本気度
OpenAIジャパンの代表執行役員社長に就いた長崎忠雄氏(55)は、日本におけるクラウド普及の功労者として知られる人物。1993年に米カリフォルニア州立大学ヘイワード校・理学部数学科を卒業後、西武ポリマ化成やデル、F5ネットワークスジャパンを経て、2011年にクラウドインフラで世界最大手のアマゾン ウェブ サービス(AWS)の日本法人「AWSジャパン」に移籍した。
当時はAWSが日本で本格的に活動を始めて間もない時期。東京にデータセンター群を開設したばかりの2012年2月に社長に就くと、2018年には大阪でもデータセンター群開設を実現させるなど、12年間にわたり同社を牽引してきた。
AWSジャパンは2月中旬、長崎氏が3月11日付で社長を辞任すると発表していた。後任の役職に「暫定」と記載されていたことからも、唐突な人事であった様子がうかがわれ、「何だこれは、と業界がざわついた」(ビッグテック社員)。
長崎氏がOpenAIジャパンの社長に就いたのは、AWSを去った翌日の3月12日。会見で長崎氏は、移籍を決めた理由について、生成AIがクラウド同様に社会を革新する可能性にひかれたと明かした。
「テクノロジーの業界に身を置いて25年以上経つが、さまざまな日本の顧客と対話を重ねることで、新しいテクノロジーを使ってもらうノウハウを培ってきたつもりだ。私の経験を生成AIに生かすことで、より日本社会に貢献できるのではないかと思った」
複数のリーダー候補に会ったものの…
オープンAIとしても、この日本のクラウド市場における実績が、長崎氏を登用する決め手となった。さらにライトキャップCOOは、「すべてのリーダー候補に会う過程で、私が最も多くを学べた人物がタダオだった。日本のビジネスリーダーや消費者が気に掛けていることを私たちに伝えるすばらしい能力を持っている」と絶賛した。
日本市場への本気度が示されたのは人材面だけではない。同社は4月15日、基盤モデル「GPT-4」を日本語に最適化したカスタムモデルを発表。日本語の文章要約などの性能を高め、動作速度も従来モデル比で最大3倍となった。数カ月以内に広く公開されるAPIで活用すれば、顧客企業はより高性能なアプリケーションを開発できる。
「私たちが日本の皆さん、政府、企業、研究機関との長期的なパートナーとなる最初のステップだ」。会見の終盤に公開されたビデオメッセージで、サム・アルトマンCEO(最高経営責任者)はそう語った。
クラウド王からトップを引き抜き、日本の特注AIまで用意したからには、他の追随を許さぬシェア拡大が至上命令だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら