"au経済圏"で囲い込む、田中社長の次の一手 ドコモを抜いたKDDIが打ってきた布石
狙いは当たる。セット割引サービスは半年で契約数200万件を突破し、高額なスマホ料金に不満を持つユーザーをつかんだ。値引きによる減収の影響も多少あったが、主にドコモからユーザーをバッサリ刈り取ることに成功。3月末時点の契約数は933万件に上り、業績を伸ばす原動力となった。
KDDIの“囲い込み”はこれだけではない。商業施設などで使えるクーポンを配信したり、米アップル製品の修理代金を負担したりするコンテンツサービス、コンビニや飲食店など世界3800万店でポイントを使ったり貯めたりできる電子マネーといった具合に、日頃から自社や提携先のサービスを利用させる仕組みを作り、着実にユーザーを増やしてきた。
ライバルもセット割開始
だがここに来て、一連の田中改革も、曲がり角を迎えている。2014年度はKDDIをはじめ、各社のスマホ販売台数が減少。端末も各社横並びで差別化が難しくなった。さらに、NTT東西が始めた光回線の卸売りサービスを利用し、ドコモとソフトバンクも3月からセット割引を開始。KDDIの優位性は急速に薄れつつある。
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いまKDDIが目をつけている新たなサービスは、金融と物販だ。すでにある銀行や損害保険に加え、4月に出資したライフネット生命保険の商品の拡販に力を入れる。
さらに全国に2500店、月間1000万人が来店するauショップの集客強化を目的に、店頭のタブレット端末などで食料品や日用品を販売し自宅に届けるサービスも始める予定だ。通販を利用しないネット初心者や高齢者をターゲットにする。
「保険契約者にはポイントを優遇する。物販でもポイントを活用できるようにするなど、サービスを連携させる」(金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏)。顧客1人当たりの単価を引き上げ、「auの経済圏をさらに拡大していく」(田中社長)ことが、当面の中心戦略になる。
これら新戦略の先行きは楽観できない。店頭に足を運んででも購入したくなる品ぞろえや、差別化されたサービスを提供できるのかは未知数だ。このままの勢いで突っ走り、3社の中で抜きんでることができるか。KDDIもまだ盤石ではない。
(「週刊東洋経済」2015年7月4日号<6月29日発売>「核心リポート02」を転載)
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