NTT鵜浦社長「単純な割引サービスはしない」 大変革期に「民営化30年」の節目

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NTTが民営化されて30年、鵜浦社長の目に激動の通信業界はどう映ってきたのか(写真:今 祥雄)
1985年の民営化から30年を迎えたNTT(日本電信電話)。グループは現在、大きな変革期を迎えている。NTTデータ、NTTコミュニケーションズ(以下コム)が積極的に海外買収を仕掛け、東西会社は光回線サービスを法人向けに大きくシフトさせている。稼ぎ頭のNTTドコモはビジネスモデルの再構築、そしてコスト構造改革の真っ最中だ。節目を迎えたグループをどのように舵取りしていくのか。鵜浦博夫社長が東洋経済など、各社のインタビューに応じた。

30年前は9割以上が固定電話の売上高だった

1985年の4月1日、当時の真藤恒社長が今のコムの本社のビル(日比谷)で除幕式を行った。日本電信電話公社が幕引きとなり、株式会社として新たにスタートしたわけだ。電電公社の歴史は33年、株式会社のNTTになって今年で30年を迎える。民営化当時、私は課長補佐だった。まだ管理者になりたての若手だったが、非常に新鮮だったのを覚えている。

その後、1988年にNTTデータを分社化、1992年にドコモを分社化、1999年には持ち株会社を再編成して東西とコムに分社した。そうした中で、マーケットの変化を先取りすることも、後手に回ることもあったが、状況は大きく変化してきた。1985年当時の売上高は5兆1000億円で、94%が固定電話の収入によるものだった。現在は売上高11兆円のうち、固定電話の収入は14%で、海外売上高とほぼ同じ水準になっている。

インターネット、ブロードバンド、クラウド、モバイル化などがNTTをワンオブゼムの存在にした。30年前は電気通信を独占するメインプレイヤーだったが、多種多様なプレイヤーが参加する時代になってマーケットは活性化し、NTTも従来と異なるビジネスができるようになった。ワンオブゼムは決して悲観的な意味ではない。チャンスと重い責任のあるワンオブゼムだ。ICT(情報通信技術)は地域間の連携や、産業の融合に役立つ道具だ。グループとして、化学反応を促し、新しいビジネスモデルを生みだすための「触媒役」を務めていきたい。

――ICTの牽引役だったNTTが触媒という存在でよいのか?誰が旗振り役をやるのか?

ICTはさまざまなものをつなぐ道具だ。それを使いやすく、セキュリティの高いものにするのがNTTの仕事。利活用についてはわれわれインフラ事業者が叫ぶものではない。それを使いこなすプレイヤーから新しいビジネスが生まれてくるからだ。

日本の場合は、伝統的に破壊型のビジネスモデルが生まれないが、これは否定されるものだろうか。日本型のICTは共存共栄のモデルを作っていくべきだろう。グーグルやアップルなどと共存できるビジネスを進めるために、われわれは触媒などと申し上げている。地方創生やオリンピックがその取り組みのきっかけになればいい。

――2016年に電力業界が全面自由化を控える。通信と同様、自由化が進む状況をどう見るか?

われわれは全国展開する中で、あるエリアだけ新規参入があるという競争だった。電力は地域独占のところに競争が入るということで、様相は異なると思う。通信が恵まれていたのは、デジタル化など、技術革新によってコストダウンの可能性があり、モバイルを中心とした新しいサービスが生まれるタイミングで民営化されたことだった。結果として売上高は5兆円から11兆円に成長するなど、マーケットを広げながら事業を進めることができた。

一方で、電力業界はこれから需要が伸びるのか、コストダウンがどこまで可能かということを考えると難しい面はある。新しいマーケットを開拓する競争ならNTTも協力するが、単純な価格競争の乱戦にお付き合いするのは嫌だというのが率直なところ。われわれも業界の乱戦を卒業したいと思っているところだ。

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