何でもあり、小田原のバチカンが示す国の新しい形 正解がないからこそ、無数のチャレンジができる

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小学校を卒業すると子ども会は終わる。私立の中学に行けば学校もバラバラ。だから、私たちは希望者がそのまま青年部に入れるようにした。もちろんお酒抜きだが、部会後の飲み会も参加できる。青年部の数はさらに増え、子どもたちの「もらう楽しみ」は「支える喜び」に変わった。

御神輿
お祭りでは青年部に入った中学生も神輿を担ぐ(写真提供:酒井沙織)

地区の全体行事に防災訓練がある。避難先での炊き出しも大切な訓練の1つで、今年はレトルトのカレーを用意した。訓練の最中、たまたま顔見知りのお年寄りが通りかかった。

「せっかくだからカレー、食べていったら?」

「いや、私は違う地区だから」

「いいよ、気にしないで、食べていきなよ」

何気ないやりとり。だが、この会話のなかに、新しい歴史の鼓動を感じた。

国民が生き延びる道を模索したスウェーデン

貧しい農業小国だったスウェーデンでは、20世紀初頭にP.A.ハンソンが登場し、すべての経済的、社会的バリアを破壊しよう、お互いが家族のように支え合う国を作ろう、と国民に訴えた。「国民の家」という歴史的な演説である。

当時のスウェーデンでは、若者がアメリカに移住し、出生率が下がり、多数の国民が貧しさにあえいでいた。誰もが等しく苦しんでいた時代だった。

だからこそ、彼らは、垣根を越えて、自由と平等をすべての人たちに保障し、一人ひとりが連帯することで、すべての国民が生き延びる道を模索した。のちに言う「社会民主主義」の始まりだ。

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