何でもあり、小田原のバチカンが示す国の新しい形 正解がないからこそ、無数のチャレンジができる

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ある日のこと。ソノケンさんから、人手が足りなくて婦人部は解散してしまった、という話を聞かされた私は、いかにも学者っぽい口調でこう言った。

「いまどき、男女を分ける必要なんてないですよ。男も女もみんな青年なんだから、一緒にやればいいんですよ」

とはいえ、自治会は、高齢者の意向が大きい。保守的な人も多いから、男性と女性を同じ部会に、なんていう提案は、反対されるはずだ。ところが、「うちの自治会長の峯(一喜)さんならきっと応援してくれますよ」と言って、ソノケンさんは、あっさりと青年部を男女の集まる場に変えてしまった。

これには驚いたが、青年部はひと回り大きな組織になった。じつは、青年部のメンバーは子ども会活動と重複している。担い手が増え、青年部の風通しがよくなると、とたんに子ども会活動も活気づいてきた。

北条五代祭、お囃子会、そうめん流し、海での網引き、肝試し、夏祭り、焼き芋、6年生を送る会……イベントは盛りだくさん。どうせやるんなら、大勢の子どもたちに参加してほしい、いっそのこと、よその地区の子どもたちにも声をかけてはどうか、そんな景気のいい話も出始めた。

焼き芋大会
子ども会のイベントの1つ、焼き芋大会(写真提供:神永裕子)

ただ、子ども会は会費制だから、会費を納めていない他地区の子どもたちが参加すれば「ただ乗り」との声も出かねない。悩みどころだった。

みんなの心がひとつになると一気に活気づいた

イベントの舞台は、小田原藩主・大久保公の菩提寺、大久寺だ。副住職で青年部メンバーの小林正行さんは、お寺はみんなの空間ですよ、とさりげなく言った。この一言は効いた。お金は出せる人が出そう、どの地区の子どもも格安で参加できるようにしよう、という話でまとまった。

みんなの心はひとつになった。それからはあっという間だった。いまでは、お寺には、区域を超えて100人以上の人たちが集まっている。にぎわいは、子どものいる家庭に自然と伝わる。子ども会への入会者も増え、15人前後の子どもたちが会員に名を連ねてくれるようになった。

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