日本株については、「東証1部のPER(株価収益率)は16倍~17倍程度であり、割高感は乏しい」、あるいは「業績の裏付けがある」ということを根拠にして「株価はバブルではない」という専門家が圧倒的に多いようです。
しかし私は、いまの異常な領域に入りつつある株式市場では、過去の株価収益率との比較や円安を裏付けにした業績は、今後はまったく当てにならないだろうと考えています。
バブルが醸成されつつある状況下において、とりわけ海外の投資家が日本株の買い越し額を増加させてきています。東証の統計によれば、海外投資家は1月~5月の合計で約2兆7700億円を買い越しましたが、その買い越し額のうち2兆円近くは欧州で金利低下が鮮明になった4月に主に欧州の投資家によってなされていたのです。
2015年の先進国の株価を見ると、日本だけが約1割の上昇を達成しているのは、ECBの量的緩和に伴って欧州投資家の買いが4月以降に急増しているのが明らかな原因でしょう。
海外投資家が日本株を買う理由としてよく言われるのが、日本企業の利益が過去最高であること、企業統治改革により株主還元が増えていることなどです。さらには、「株価収益率などの指標から見ればアメリカ株や欧州株と比べても割高感はない」という意見もよく聞かれます。
海外投資家が日本株を容赦なく売るとき
しかし、海外投資家が日本株を買う最大の理由は、GPIFや共済組合、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日銀などが政策的な買い需要で株式市場を買い支えていてくれるからなのです。
おまけに、日銀は相場操縦まがいのETF買いを繰り返しています。というのも、日銀のETF買いは多くの場合、大引け間際に大量に発注されているからです。
仮にファンドや個人がこのような買い方を繰り返したら、証券会社から相場操縦の疑いがあると警告を受けることになるでしょう。さらには、金融庁から処分されるケースも出てくるでしょう。日銀のこのような買い方が許容されるのは、株高を維持するためには相場操縦もいとわないという国の方針があるからなのでしょう。
海外投資家は「『官制の買い』が続くかぎり、強気で買いだ」と割り切って、日本株を買っています。消去法のなかのさらなる消去法というかたちで、日本株がより選ばれやすくなっているというわけなのです。海外投資家と官制の買いが高値を追いかけ合うなかで、日銀を除いた官制の買いが2015年末にも尽きるかもしれない情勢下にあるなかで、海外投資家が次に取ってくる投資行動はおおよそ予想をすることができます。
現時点で海外投資家にある投資アイデアは、官制の買い需要が弱まるのを見計らって日本株の利益確定を進めるというものです。1990年代の「PKO」(いわゆる公的機関による株価維持策)などを振り返ってみても、官制相場の反動が大きいことは歴史が証明しています。
もちろん、それだけでも十分な投資アイデアになりうるのですが、FRBの利上げとその後の円相場の推移予想を組み合わせることによって、個人投資家が株価の高値波乱に巻き込まれないようにすることは十分に可能であるように思われます。
なお、海外投資家が日本株をいつ売ってくるのかについては、私のブログ『経済を読む』でも今後詳しく述べる予定ですので、興味がございましたらご覧いただければ幸いです。
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