サッポロ"無風"総会の背後にファンドとの攻防 「不動産は甘え」、会社は事業再編も受け入れた

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国内酒類事業の利益率は、ビール減税やコロナ禍からの回復を受け、2023年単年では5%台へと成長している。

2026年に酒税改正を控えており、ビールの構成比率が高いサッポロにとっては追い風の状況が続く。ただ、アサヒビール、キリンビールの水準(11%台)にはほど遠い状況だ。

酒類事業に集中し、ビールのさらなる拡販や単価の底上げなど、収益性改善につなげられるかが焦点になる。

海外事業でも成果を出せるか

新方針で「中長期的に国内酒類事業と同規模まで成長させる」とした海外事業も課題は多い。サッポロは海外企業の買収や合弁設立後に減損を繰り返しており、昨年もアメリカ・アンカー社の解散で60億円の減損を出したばかりだ。

海外事業については、総会で松風里栄子取締役がサッポロブランドの商品を強化していく方針を改めて説明した。「カナダは伸長、アメリカはこれからではあるが伸長を続けてきている」

ファンドから再び圧力をかけられ、要求をのみ込んだサッポロ。今回はついに本業の利益率の低さという長年の課題に本腰を入れる。株主を納得させるだけの成果を出せるか。総会が終わっても息をつく暇はなさそうだ。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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