サッポロ"無風"総会の背後にファンドとの攻防 「不動産は甘え」、会社は事業再編も受け入れた
突然に思える戦略の転換だが、背景にはシンガポールの投資会社、3Dからの執拗な働きかけがあった。
2023年1月に始動した現中計で、不動産事業は酒類事業に並ぶ利益の柱、「コア事業」の位置づけだった。ファンドの意向もあり、そこから1年強で不動産はコア事業から外れることとなったのだ。
総会では株主から「ファンドにケツをたたかれ、不動産事業を整理するのは心配だ」との質問が出た。これに尾賀真城社長が「整理するということではない。保有のあり方について研究している」と応じる場面もあった。
不動産事業は「経営の甘え」
3Dがサッポロに接近を始めたのは2022年。収益性の低い酒類事業が株式市場で低評価を受けていることを背景に、現中計の発表前に同社の社外取締役に対して経営計画を検証するよう要望した。だが3Dによれば、サッポロからは拒絶、回答なしといった対応だった。
さらに同年、社外取締役に対し少数株主から意見を聴取し、その内容を新中計に反映するよう、中計の発表延期を要望。しかし結局サッポロは3Dを除き、1社からしか直接的に意見を聴取しないまま、2022年11月に予定通り中計を発表している。
3Dは2023年3月に、株主へ向けた書簡を公表。サッポロの酒類事業の低利益率を指摘し、安定的に利益を生む不動産事業が「経営の甘え」を招いているとして、中計でコア事業に据えられたことに疑問を呈した。
サッポロも尾賀社長が3Dの面談に応じるなど、対話を続けていた。潮目が変わったのは2023年9月のこと。同社は3Dが推薦した外部有識者2名、社内取締役5名で構成する「グループ戦略検討委員会」を発足。中長期的な事業戦略について議論するためのもので、3Dは同委員会の発足を歓迎するコメントを発表した。