サッポロ"無風"総会の背後にファンドとの攻防 「不動産は甘え」、会社は事業再編も受け入れた

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だがここから、圧力はさらに高まる。

3Dは昨年10月19日、サッポロ株5.09%の大量保有報告書を提出。同日までの直近60日間では、発行済み株式の0.41%を取得していた。以降、3Dは短期間で同社株を買い増し続け、昨年12月25日時点で議決権比率を16.19%まで高め、ついに筆頭株主になった。

16%超を握る株主と対立することになれば、単独で反対された場合でも、会社が提案する議案の賛成率は8割程度まで落ちる。実際、3Dとの攻防が続く富士ソフトでは、3D単体では2割程度の議決権しか保有していないものの、今年3月に開催された総会で、会社側が提案した議案の賛成率が6割程度まで下がっている。

今回のサッポロの総会では、新しい社外取締役として、岡村宏太郎氏と藤井良太郎氏が選任された。いずれも会社側の提案だが、もともとは3Dから推薦された人物だ。藤井氏は先述の戦略検討委員会の委員も務めていた。

そして総会は「無風」となった

結局、サッポロは事業戦略でも、役員人事でも3Dの主張をのんだ。3Dは要求した内容がほぼ会社の経営方針に盛り込まれたことで、株主提案や、社長の選任に反対する理由がなくなったとみられる。

出席した株主は220人と5年ぶりに200人を超えたが、質問は少なかった(記者撮影)

そして、尾賀社長は97.49%と昨年比で約7%高い賛成票を集めた。「無風の総会」は株主側と会社側が総会を前に折り合った結果といえる。

サッポロにとって、3Dからの経営改革要求は「モノ言う株主」の再来だ。2000年代には、アメリカの投資ファンド・スティール・パートナーズが買収提案や経営陣の刷新を求める株主提案を実行した。

リーマン・ショックなどの影響で最終的にスティールは撤退したが、当時指摘されていた酒類事業の低利益率や、不動産の活用方法などの課題は残ったままだった。

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