筆者の取材によれば、航空医学を数年専門に診察、あるいは研究して海外の学会などにも出席し航空医学の進歩に寄与できる、航空医学専門医に相当する医官は、空自では現在1人だけ。他の機関だとJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)に数名、JALと ANAに数名といったところだ。
現在空自で残っている最後の1人もこの3月で空自に見切りをつけて中途退職したという。つまり4月以降、航空医学の専門医とよべる医官はゼロ、となる。
航空医学実験隊は航空医学および心理学上の各種調査研究や、救命装備品等の実用試験、航空身体検査、航空生理訓練、防衛装備庁の研究所などへの航空医学に関する技術協力などを行う部隊だが空洞化している。
航空医学実験隊の研究にはまともな研究実績の修士や博士号保持者がおらず、そのレベルは、一般人でもできる程度の調査研究がほとんどだ。ここにその分野の専門医は配置されていない。
航空医学の進歩はまったく期待できない
例えば加速訓練の担当医官は循環器内科や脳外科など気絶を扱う専門医が適任だが、現在は消化器内科医で3月中に退職した。空間識訓練の担当は、めまいや乗り物酔いを扱う耳鼻科医が適任だが、現在は整形外科の医官だ。
低圧訓練の担当は低酸素症状を扱う呼吸器科が適任だが、現在は皮膚科医である。訓練部の部長は眼科医(専門医なし、眼科専門研修未経験)で医学的なアドバイスはほとんどできない。これで航空医学の進歩はまったく期待できないし、他国から取り残されていくことになるだろう。
このような現状で戦闘機や他の航空機の開発を医学的に支えることは不可能だ。GCAPの共同開発のパートナーであるイギリスやイタリアに期待するしかない。
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