社会資本の老朽化は想定内の緩やかな震災--『朽ちるインフラ』を書いた根本祐二氏(東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻主任教授)に聞く


 当然、それ以前に建設された施設は築30年以上経過している。ほとんどが震度6には対応していたはずだが、茨城県や福島県を中心に震度5~6だったにもかかわらず使用不能になった庁舎は多い。ほかの地域でも岩手県の遠野市役所は全壊し、首都圏の習志野市や藤沢市の市役所も安全に支障があるとして、建て替えを余儀なくされている。

震度6以下で壊れた理由は、もはや築30~40年経ているから設計・施工ミスとは考えられない。老朽化以外に理由はない。老朽化すると震度6以下でも壊れる。首都圏の場合、公共施設のほぼ半分が築30年以上経過している。もともと耐震あるいは強度補強は、その施設の寿命を延ばしているわけではない。古くなれば老朽による損壊の可能性は増す。「危険な公共資産」とともに暮らしていることが、震災のもう一つのメッセージだった。

──急に老朽化が進んだわけでもありません。

日本の公共投資は、64年の東京オリンピックの前後に大きな山を形成した。首都高速が象徴的で、インフラを一気に整備した。それから半世紀。現在建設中の施設は70~80年、あるいは100年もつような造り方をしている。ところが当時は、高成長を成し遂げ、先進国をキャッチアップするためのインフラ整備であり、技術的に十分な蓄積もなかった。まず造ることを優先したから50年を経て、大きな節目を迎えている。

──更新しようにも、どの自治体の台所も苦しい。

更新投資に財源不足が生じない自治体はない。どこもほぼ同じような時期に大投資をしていて、同じように更新時期を迎えている。増える福祉費を公共投資に戻せばいいとはとても言えない。予算が乏しいところでどう工面、工夫するか。

──この本では「七つの知恵」を提示しています。

簡単なことではないが、老朽化の深刻さを認識したうえで、自治体の当事者は自分の部署の利害を離れて真剣に考えることだ。たとえば、絶対量が多くないか評価してみる。公共施設にしてもインフラにしても、人口のピーク時に、まだ増える前提で造ったものが少なくない。何より人口減に転じ、子どもの減り方に加速がついている中で、漫然と建て替えをするわけにはいかない。

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