社会資本の老朽化は想定内の緩やかな震災--『朽ちるインフラ』を書いた根本祐二氏(東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻主任教授)に聞く
統廃合の検討は必須。福祉施設が必要なら、学校を統合して切り替えるのも一案だ。地域のニーズに合わせて優先順位をつけていく。公共施設の統廃合は政治的には大変だが、その理由をきちんと示して実行するリーダーシップが必要とされる。
同時に、ほかにも工夫ができないか。施設と機能の分離もいい。従来の発想は一つの施設が一つの機能に対応している。独立施設ならそれぞれが建物や駐車場を必要とする。実際には、どの施設もほぼ半分は共用スペースになっている。一つの建物がいろいろな機能を果たし、共用部分をできるだけ減らすことだ。
──多目的な部屋を造る動きもあります。
教室や保育室、図書室はだいたい同じ構造でいい。用途を決めない部屋を造り、学校が足りなければ教室として使い、学校が余ってくれば、老人のための憩いの施設にするといったように、変更できるようにしておく。それぞれの施設が余った部屋を足りないところに貸していくというやり方もいい。
ただし、地方自治法に行政財産という概念があって、学校、児童館、福祉施設ごとに条例があり、それに合わせて補助金が出ていて用途は変えられない。こういった制度の変革も進める。
──自治体はかなり遊休地を抱えています。
空間利用も一つの方法だ。公的な不動産は、土地を使っていなくても、それをゼロと判断するだけで、有効活用しない。民間なら使える土地は売るか貸すか、新しい事業をするか、すぐ考える。都市部だったら、住宅やホテルの下に市役所が入ることで、大幅に費用を圧縮して建てることもできる。