野田秀樹、「東京キャラバン」構想を描く 「東京の文化」は世界一を目指せるか

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野田氏のこの壮大な企画に、名和氏がビジュアル面で、日比野氏がネットワーク面で参加する。日比野氏の仕事については、かつてのバブル期に賑わせた作品制作よりも、金沢21世紀美術館などでの地域密着型プロジェクトのような近年の活動を想起すればよいだろうか。日比野氏は自身の経験も踏まえ、障害者のアートに関するプロジェクトも進行中とあって、そちらにも期待を寄せたい。

一方、1975年生まれとほかの2人に比べて若い名和氏には、大抜擢といった印象を受ける向きもあるかもしれないが、鹿の剥製の表面にガラスの球体をびっしりと付けた「BEADS」シリーズなどを観ればうなずける配役である。圧倒的なビジュアルイメージの中に、生々しいリアルとバーチャルの中間をいくような現代的なセンスが感じられる、日本の現代美術を代表する作家だ。今回の東京キャラバンについては、「メタモルフォーゼ(変容)」をコンセプトに据えたいとしている。

実現には課題も山積

多種多様な神話とコンテンツを積んだ、何台もの華やかな東京キャラバンが日本での巡業を終えて、2020年の開会式の日に競技場へと集結したとき、祭りの中心オリンピックの火ぶたが切られる。

野田氏得意の「物語」としては、確かに圧巻だが、課題も少なくなさそうだ。プロジェクトの具体的な面白さを左右するコンテンツが、まったくと言っていいほど決まっていないもようなうえ、ある意味中央政府から「送られてくる」東京キャラバンと、地方がどのように交流を図っていくのかというのも見えてこない。

また、国内外に発信する文化事業の「目玉」にするには、ある程度の台数が必要になるだけでなく(野田氏の構想ではオリンピックの参加国の数だけキャラバンをそろえたいとしている)、それぞれの内容や質も重要になるが、限られた予算や期間でどれだけ充実させられるか未知数だ。

不安要素は枚挙にいとまがないが、日常のなかに強烈な幻想を潜り込ませ、観客を陶酔の夢に包んできた野田氏のこと、2020年は日本中に大きな夢を見せてほしいところだ。

(執筆:タイムアウト東京編集部)

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