野田秀樹、「東京キャラバン」構想を描く 「東京の文化」は世界一を目指せるか
会場についてもさることながら、そもそも開催することに対しても賛否の声が依然入り交じっている「東京オリンピック パラリンピック」。単なるスポーツの祭典にしてしまっては、もったいないと、2020年に向けた様々な取り組みがいよいよ動き出そうとしている。
舛添要一都知事は、2012年のロンドン大会では「文化の面でも画期的なこと」が行われたとして、東京大会でも「文化でも世界一を目指す」と意欲を見せている。こうした中、東京都が策定した文化振興策の指針「東京文化ビジョン」の中で、リーディングプログラムとして期待が高まっているのが、「東京キャラバン」である。これに向けて都は6月3日、都知事と、東京キャラバンの提唱者である野田秀樹氏ら3人の現代アーティストの意見交換会を催した。
2020年以降も続く「物語」が必要
東京キャラバンとは、東京芸術劇場の藝術監督も務める劇作家/演出家の野田氏が、東京オリンピックに向けて構想する、大掛かりなプログラムだ。3日には1964年の東京オリンピックの際にも多大なる貢献を果たした丹下健三による設計の東京都庁に、野田氏のほか、日比野克彦氏と名和晃平氏が集まった。
2016年、リオデジャネイロオリンピックの閉会式の日に、ブラジルからの出発を目指す東京キャラバンは、ダンスや音楽、美術、映像あるいは大道芸やストリートパフォーマンスといったものまで、さまざまな見世物コンテンツを積んだ屋台のようなものを想定している。
文化は人の移動や交通から生じるものだとして、何台もの東京キャラバンが日本全国でパフォーマンスを行うとともに、現地の文化とも交流していく。野田氏は、自身がまとめた東京キャラバン構想の中で、「お祭りがやって来る、あるいは、サーカス団がやってくると思えばいい」と説明している。
東京キャラバンを通じて野田氏が目指すのは、今から2020年、そしてそこからの未来をつなぐ「物語」を作ることである。
自身がまとめた構想では、「必要なのは、今、2020年に向けての『物語』、そして、その『物語』が2020年を越えても続けていけるような、そんな『物語』を作ることではないのか?(中略)今回の東京オリンピックには、今、日本を動かすべき、そうした大義名分のような『物語』を見つけるのは難しいだろう。ただ、ある程度の大きさの『物語』を積み重ねることで、人々の機運を作ることはできる。そして、盛り上がっていった機運の中からしか、壮大な物語は生まれないと思う」と説明している。これに先駆け、今年10月ごろには、本格開始に先駆け、試験的に一カ所で(場所は未定)開催される予定だ。
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