TBS「世界遺産」が高精細映像にこだわる理由 テレビ局は「4K」にどんな未来を見ているのか
液晶テレビのCMや家電量販店のテレビ売り場で最近よく見かけるのが「4K」。フルハイビジョン(約207万画素)の4倍となる解像度(約829万画素)の高精細映像による次世代の映像フォーマットのことだ。新しく大画面テレビを購入する人の多くが、4Kテレビを選んでいるといわれる。総務省が策定したロードマップに沿えば、4Kは今後、2020年の東京オリンピック開催に向けて、CS放送やBS放送、ケーブルテレビ、IPTVなどへ順次広がっていく予定だ。
「4K」放送を見ている人はまだ少数だが……
ただ、124/128度の衛星を使ったCSでの試験放送が始まったのがちょうど1年前の2014年6月。その後、今年3月に同衛星を使ったCS放送とケーブルテレビ(CATV)で商用サービスが開始されたほかは、4Kに対応しているのは一部のインターネットの動画サイトぐらいで、実際に4Kの映像を見ている人はまだまだごく少数にとどまっている。今の地上波では電波の帯域が足りないため、総務省のロードマップ上に地上波の4K放送は入っていない。
それでもNHKをはじめ、テレビ各局では手探りながらも4K放送の時代が本格化することを見据えた対応が始まっている。TBS『世界遺産』(毎週日曜午後6時放送)もそうした番組のひとつだ。
世界遺産は2011年から4K撮影を制作現場に一部導入してきたが、6月28日午後6時から放送の、イタリア・トリノの世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」は、初めて全編を4Kで撮影した映像を、地上波で放送する。全編を4K撮影した番組の放送は、番組として初となる。現在、地上波は4Kに対応していないので、ハイビジョンに変換した放送となるが、それでもハイビジョンで撮影するよりも美しい映像となる。
「世界遺産」は、1996年に放送を始めたときから、「人類共通の財産である世界遺産を、最新の映像技術で撮影して未来に残す」ことをコンセプトとしている。そのため、新しい技術をいち早く取り入れる「新しもの好き」であり、アナログ時代の1999年にもいちはやくハイビジョンで番組をつくった。
「最新の」技術は「こなれてなく」、「ノウハウの蓄積もない」ため、他に先駆けて取り入れようとすると、手探りで作業を進めるしかない。こなれてきた時には、さらなる最新技術や機材が登場し、それと格闘する。今の4K撮影への取り組みがまさにそうだ。
4Kカメラや機材はまだ大きく重たい。今のテレビ業界ではドラマや中継など撮影スタッフの移動の少ない番組で使われるのが主で、それを機動力が求められるドキュメンタリー、しかも海外取材で使ったり、ケタ違いに容量が大きいデータを管理したりすることなどは、現場としても苦労がある。