TBS「世界遺産」が高精細映像にこだわる理由 テレビ局は「4K」にどんな未来を見ているのか
それでも、4Kで撮影すると表現の幅が格段に広がる。たとえば、イタリアの世界遺産「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群」。古い教会に、1500年前のモザイク画が、そのまま残っているという素晴らしい世界遺産なのだが、ハイビジョン撮影だと、ちょっと表現が難しいところがあった。
モザイク画というのは、色とりどりの小さなガラス片をはめ込んで絵を描くもの。そのため1500年経っても、色褪せずに残っているわけだ。しかし、「どんな絵なのかわかる」ように広いサイズで撮影すると、モザイクで描かれていることがよくわからなくなってしまう。
かといって、「モザイクであることがわかる」ようにアップで撮影すると、今度はどんな絵なのか、全然わからなくなってしまう。ブラウン管時代のテレビ画面をイメージしてもらうと、わかりやすいかもしれない。画面のすぐ近くまで目を寄せると青・赤・黄色の三原色の画素が見えるが、全体としての映像は何がなんだか、わからなくなるのと同じだ。
新しい映像表現の可能性を拡大
それを、高画質・高精細の4Kで撮ると、絵としての全体像がわかるサイズで撮影しても、小さなモザイクで描かれていることが認識できた。手前味噌ながら番組スタッフもこれには感動した。全体とディテールを同時に撮影する。「最新の」技術は、新しい映像表現の可能性を広げてくれている。こうした20年にわたる最新放送技術への挑戦が評価され、『世界遺産』の制作チームは、優れたテレビ、ラジオ番組や個人・グループに毎年送られる放送文化基金賞の2014年度個人・グループ賞をこのほど受賞できた。
近い将来、4Kがどれくらいのスピードで普及していくのかは、映像の送出や受像システムの普及などの社会的インフラの問題が関わってくるので、正確な予測は難しい。それでもテレビマンが4Kのような高精細な映像にこだわるのは、テレビの歴史がそうだったからだ。アナログからデジタルへ、そしてSD(標準画質)からHD(ハイビジョン画質)へ。テレビは常に「高精細」を求めて進化してきた。
今後も、TBSの『世界遺産』に限らずテレビ各局では「映像のクオリティ」が質と直結するような番組から4K撮影が制作に導入されていくだろう。CSやBSに加え、インターネットを通した映像配信やこれから出てくる4Kパッケージメディア等によって、4Kの美しい映像を実際に目にした視聴者が増えてくると、放送でも4Kの映像品質が求められるようになってくるはずだ。
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