「ツンデレな道綱母」が藤原兼家にした嫌がらせ バカにされても大納言にまで出世した藤原道綱

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正妻と妾で待遇が異なったのは、本人だけのことではない。正妻との間に生まれた子と、妾との間に生まれた子では、待遇に大きな違いあった。

寛和2(986)年、兼家の策略による「寛和の変」によって、花山天皇は出家して、退位することになる。この一大プロジェクトにおいて、藤原道綱は、兄の道隆とともに清涼殿にある三種の神器を皇太子の居所である凝花舎に移すという役割を果たしている。

光る君へ 大河ドラマ 藤原道綱の母
京都御所にある清涼殿(写真: hanadekapapa / PIXTA)

無事にミッションを果たした道綱だったが、兄の道隆だけではなく、弟の道兼や道長に比べても昇進は遅れている。

バカにされても出世した道綱

3人とも正妻である時姫が産んだ子だったから……ということもあるが、それだけではない。実際には、国母となった詮子と兄弟だったことも昇進の差となったようだが、道綱の母としては、やるせない気持ちだったことだろう。

もっとも、道綱の場合は、単純に能力が劣っていたともいわれている。藤原実資からは「一文不通」、つまり「文字が書けない」と揶揄されて、「あいつは自分の名前を書くのがやっと」と『小右記』に書き残されている。あまり仕事ができるタイプではなかったようだ。

それでも、異母弟にあたる藤原道長とは、気が合ったようだ。道長が政治の中心になるにつれて昇進を重ねて、長徳3(997)年には大納言となっている。

なんだかんだで、よいポジションに収まっているあたりは、さすが、したたかな兼家の息子である。


【参考文献】
山本利達校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』(新潮社)
倉本一宏編『現代語訳 小右記』(吉川弘文館)
今井源衝『紫式部』(吉川弘文館)
倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書)
関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』 (朝日新書)
真山知幸『偉人名言迷言事典』(笠間書院)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は 『偉人メシ伝』 『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』 『日本史の13人の怖いお母さん』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)。「東洋経済オンラインアワード2021」でニューウェーブ賞を受賞。

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