「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

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「どうぞ、お手に取ってご覧くださいね。このウェアは、乳がんの手術をされた方にも気にせずお召しいただけます」

横浜にある古民家カフェの一角。色とりどりの小物や衣類を並べながら、日高利香子さん(仮名・50歳)が微笑んだ。現在バリに住む利香子さんは、日本に帰るたび小さなイベントを開き、自身が手がけるヨガウェアやバリの雑貨を販売しているという。

私が前述のウェアを見ていると、利香子さんが傍らにやってきた。

単身でパリへ

「もう5~6年ほど前になりますが、私、乳がんを経験したんです。乳房は全摘しましたが、猫のおかげで助かったんですよ」

「猫のおかげ?」

驚く私に頷いて、彼女は続けた。

「私が初めてバリを訪れたのは20代後半のころで、今から25年ほど前になります。当時のバリはヨーロッパと現地のカルチャーが小気味よくミックスされていて、一瞬で心を奪われました。“ずっとここにいたい!”と思って、その後、単身移り住んだんです」

利香子さんが手がけるヨガウェア
利香子さんが手がけるヨガウェア。肩紐を絞ると、傷跡をカバーできる。現在国内ではイベント等での販売が中心で、価格は3850円(筆者撮影)

もともとフラダンスのインストラクターをしていた利香子さんは、バリでフラ用品の製造販売をしようと思っていた。すると、噂を聞きつけた人たちからオーダーが相次ぎ、彼女は思いがけず嬉しい悲鳴を上げることとなった。

「本当はオリジナルのフラショップをやりたかったんです。でも、OEMでお客様からオーダーをいただいているのに、自分がさらにオリジナルを作るのは立場的に難しいものがありました。フラでなければなんだろう?と考えたとき、思いが向いたのがヨガウェアでした。ちょうどバリが“ヨガの聖地”と言われ始めた時期と重なりましたし、前職でカジュアルウェアの販売をしていたので、アイデアもどんどん湧きました」

日本からのオーダーを捌きつつ、駐在員の多いジャカルタでバザーに参加したところ、オリジナルのウェアが彼らの妻たちの目に留まり、次第に売り上げも増していったという。

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